八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属


 山岳ガイド ミキヤツ登山教室の山行記録 ドライチンネ(チマ・ピッコロ)イエロー・エッジ       

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 真ん中がチマ・ピッコロ ルートは右のスカイライン。天気の良かった2005年の写真です。
 まさにイエローエッジ。

 2009年(6月、7月)のシャモニは天気が悪く、南仏で静養した後、青空を求めてドロミテにやってきました。
 しかし、ここも例年以上に天気が悪く、気温も信じられないくらい低い状況です。
 それでも足慣らしに10ピッチほどのルートを登った後、このルートにやってきました。

 このルート、グレード的にはそれほど難しくはなく、5.10a程度ですが、ここはドロミテ、辛いグレーディングになっています。

 コルチナのキャンプ場を早朝出発し、有料道路が有料となる前に通過しようとするが、僅か10分の差で通行料を取られてしまった。頑張って7時前に通過すれば、20ユーロが節約できる
のですが・・・。

 駐車場に車を止めて外に出ると、そこはドロミテとは思えないような低い気温で、早々にモチベーションはダウンしてしまった。
 既に加藤は他のエリアに転戦すべく、ガイドブックをめくっている。

 実は2005年にも将来の下見をかねてこのルートに取り付いたのですが、その10日ほど前、同じドロミテのトファナ南壁でホールドが剥がれて大きな墜落をした後遺症によって糸が残っ
た足だけでなく、それ以上に心が痛んでいたために、敗退したルート。
 しかも、墜落して怪我をしたトファナ南壁へは、元々このイエローエッジを登りに来て、その時もあまりにも風が強かったためにトファナへ転戦し、そして墜落。取り付いたのが12時近かっ
たために、怪我もあってビバークとなってしまった、因縁のルートです。
 
 それらを思い出すと、ここでの転戦は悪いことが起こりそうで、他のエリアに行くことはちょっと考えたくない状況です。

 「服を着込んで登れば何とかなるよ」と、加藤を諭して出発することにしました。
 登攀中はダウンを着込んでいました。

 駐車場から取り付きまではゆっくり歩いて40分ほど。
 既に2パーティが取り付いていましたが、とても時間がかかっているようです。
 準備をし終わってもまだ登っています。15ピッチほどなので、順番待ちをしてもまあ大丈夫と思っていましたが、これでは途中で抜くしかないです。

 1ピッチ目は5.8程度。
 しかしその傾斜はそうとは思えず、そして何より、岩が冷たくて痛くなり、グレード以上に感じます。真ん中に見える黒い点は先行パーティ。傾斜が解ると思います。



 2ピッチ目、5.9。しかし、この傾斜大理石のような硬くて滑る(ような)石灰岩では、グレードは二つは上に考えた方がよいかも。
 前半の核心部。
 加藤がリードですが、傾斜、動き共に、5.9ではちょっと低すぎでしょう。プロテクションは「必要なものは全てあり」とガイドブックには書いてありますが、小さなものから中サイズのカムは
必須です。



 3ピッチ目は何処へ行けばよいのか解らなくなるような、易しいクライミング。
 ドロミテは石灰岩のフェースクライミングとなり、易しいところは何処でも登れるため、弱点をついていけばそれがルート、ということにはならず、本当に何処へ行っていいのか迷ってしまい
ます。



 4ピッチ目は、相変わらず「何処へ行けばよいのか解らないクライミング」が続きますが、それでも上部岩壁が見通せるために、そこの基部へ向かっていけば帳尻は合ってきます。

 5ピッチ目。5.8ぐらいと思われる、かぶったフェースクライミングで、この程度なら残置は全くありません。
 何度も言いますが、二つはグレードがずれているので、ここは5.10に感じて、体を振って登らないとパンプします。




 以降、トラバースなどを交えて上を目指しますが、凄く寒く、止まるのがためらわれます。遠くに厚い雲がありますが、当然こちらにやってくるのです。



 上部の核心部。グレードは5.10a程度ですが、やっぱりドロミテ。辛いです。上部のワイドクラックも石灰岩だけあって中にホールドはあるのですが、それでも写真の通りの傾斜なので、そ
れなりの技術がないと、かなり大変です。
 先行パーティが遅くて、これまでで1時間以上は待たされていますが、ここでも寒い中待つことに。加藤が登り始めますが、すぐに追いついてしましました。この前後から雪が降ってきて、
ここから下りるか登るか迷いましたが、下降も大変なので登ることに・・・。



 本当は2ピッチに分けるところを、1ピッチでつないで登っていたパーティが上部のワイドクラックを登れずに立ち往生してしましました。
 僕らはこの寒さなので2ピッチに分けて登るためにリードを交代。このパーティを抜いて、更にお助けヒモを付けてあげて、核心部を終了。



 バックはガスでなく雪です。この核心部あたりから雪が降ってきました。
 ここまで来ればもう後は楽勝です。あとはちょっと脆い(これまでも十分脆いですが)、ドロミテチックな何処を登っていいか解らないフェースを登って終了。




 下降はドロミテに限らず何処のルートも不安が一杯ですが、今回は前後して登って、しかも、お助けヒモを掛けてあげた、オーストリア・インスブルック在住の親子の案内でとてもスムーズ
でした。
 でもやっぱりドロミテ。下降点まではしっかりとクライミングです。



 先行パーティがあまりにも遅く、抜こうにもなかなか勇気が無く・・・。
 時間が掛かってしまいましたが、とても良いルートです。
 もし僕が国際ガイドなら、絶対にお勧めしたいルートです。日本で5.10台のフェースをコンスタントに登れて、ワイドクラックもちょっとは登ったことがあるなら十分楽しめます。
 「通称ドライチンネ」、「チマ・グランデ・ディ・ラバレド」の北壁は、たしかにレビュファのヨーロッパ5大北壁(だったと思う)ですが、それは無理でもこのルートは十分ねらえます。しかも南面
なので晴れていればチョー快適です。
 これを目標にヨーロッパへ行っても、登攀後のワインはきっと奮発したくなるはずです。






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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています