八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
ブリアンソンからシャモニへ戻ると、これから天候が崩れ出すという周期で、また山には雪が積もってしまった。これじゃあね・・・ってことで半ばミックスルートは諦めた久野が、「もうドロミテ
に行こうか」と提案。もとより私には異論はない。
そりゃあ、氷雪の厳しい世界より、イタリアの太陽のほうがいいに決まっているからである。
「岩だってクラシックルートが数多くあるし、そんな古い時代に登られた岩場なら、今の道具と技術をもってすれば登るのは苦にならないはず」
そんな私の甘い思惑はしかし、ドロミテには通用しなかった。さすがは彼のメスナー氏を育てたチロルの岩場だった。
シャモニを出て1日で着くつもりが、いつものようにシーズン中滞在している種村さん宅から、更に在住している津田さん宅へとハシゴして「まったり」過ごすうちに夕方となってしまった。
「まぁいいや、今日はモンブランの向こうのアオスタくらいまで行けば」ってことで重い腰を上げる。
シャモニからすぐの国境の峠からスイスのマルティニへ入り、更にセントバーナード犬で有名な峠を、また有料トンネルを避けてどんどん登って越えるとイタリアだ。モンブラントンネルを通
ればシャモニから5分でイタリアに入るという道も取れるのだが、やっぱりこれは通行料が高い。
いくつもの街とその街を見下ろすように建っている、いくつもの城塞を眺めながら走っていると、いつの間にかミラノへと近づいてしまった。都会に入る前に仮眠を取ろうってことで、ここで初
めて高速に入り休息所で仮眠した。
朝、私がまどろんで居るうちに久野は車を出し、ミラノの通過は6時くらいだった。それにも係わらず大都市ミラノの環状線(パリもここも都市環状道はは無料)は渋滞が始まっており、その
上イタリア車は、運転がフランス人も呆れるんじゃないかというほど無謀と来ている。
普通の乗用車が割り込んで来るどころか、大型トレーラーが突然前に割り込んでくる。しかもみんなウインカーを出さない・・・
久野は手に汗握りっぱなし状態らしく、私は半分寝ぼけまなこでそれを眺めていた。「あ〜 運転出来なくて良かった」などと。(レンタカーは保険の掛かっている人しか運転できない)
こうして走ること、約500q。峠道の連続するヘアピンカーブでグロッキーになった私は、酔い止めを飲んでそのグロッキーに拍車が掛かり、つまり猛烈に睡魔が襲ってきて「道が解ら
ん!」と、久野に叱られる。まぁ、確かに寝てばかり、だ。
そしてよくわからないうちにドロミテ観光の中心、コルチナの街に着く(日本のどこぞのスキー場が、確かコルチナ国際・・とかいったような?)。コルチナはシャモニのようなイメージだったの
だが、どうやらシャモニより高級らしく、ブティックやレストランが並んだ中心街へは車の乗り入れが出来ず、一方通行の外周道路をグルグル回って駐車場に入れなければならない。(この 点はシャモニも時間規制があるが)
到着した午後は雨で、それが止んでからキャンプ場にテントを張り、早速トポ(ガイドブック)を買いに街へ偵察へ行った。イタリア語はペルーで聞いたスペイン語に似てはいるが、当然さっ
ぱりわからないのでドキドキしていたが、何のことはないシャモニと同じでここでも英語で大丈夫。キャンプ場の女主人も、本屋の女性もみんな英語を話してくれた。むしろブリアンソンの方 がフランス語しか通じなかったくらいだ。
イタリアの物価は安いと聞いていたが、通貨統合後その格差が縮まって来たらしいのと、ここが高級保養地なこともあってフランスとの差は感じられない。
何が違うといわれれば、@に車の運転が荒い。Aにイタリア人はよくしゃべる(息継ぎしてないのかと思うほど)。Bにパンがマズイ。
こんなことくらいでチーズとワインは美味しいし、街を走る車もフィアットがいっぱい、なんて訳では無くってルノーもいればトヨタもスバルも走ってる。あとは兎に角バイクが多いくらいだろう
か。
国境というものが珍しく感慨深いのは日本人にとってだけなのか、もともとヨーロッパは小国家の集まりで、今引かれているラインは後からつけられたモノだからか、ヨーロッパといっても極
端に南のスペインなどへ行かない限り、私達の期待するような変化はそうそう無いらしい。
それでも、岩をよじった反対側の壁に第一次世界大戦中の砲台跡や、穴が穿ってあったりして、このような山岳地方で戦闘が行われたなど平和世代の私達には想像も出来ない。
コルチナ・ダンペッツオの街は岩峰群に囲まれており、その規模は私達の想像をはるかに超えた広さに渡っている。コルチナの街がその観光の中心にたまたまなっているだけで、そこか
らまた車で何時間も走った先に別の山群があるといった感じなのだ。
アルプス三大北壁がもてはやされた「過去の時代」の枠の外であり、日本人には元々馴染みのないドロミテ山群だが、その特異な岩峰群と花の多さ、そしてイタリアならではの食事の美
実際、スイスの観光地では日本人は上客だし、土産物店には日本語表示までしてある店も少なくない。ハイジの世界に憧れるのもまた良し、ではあるが、もっと他にもこんな素晴らしいと味しさ。日本人はスイスへばかり行っている場合では無いように思われる。 ころがあるのだから、同じ場所にばかり群れないで様々な土地でのハイキングや登山を楽しんではいかがでしょうか。
山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪 山教室、クライミング教室を行っています |