八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。

 2010年 1月  八ヶ岳・積雪期 赤岳南峰リッジ        

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2010年1月3日(日)

 
 
 雪の少ない南峰リッジでは、1日目のアックスを振るう練習が活かされました。
 



 大晦日から続いた正月寒波も、流石にそろそろ引き下がってくれるかと期待された3日。
 寒波は確かに去ったが、天気図からはごく弱い気圧の谷が通過があるようだ。

 その後天候の回復は遅れることも予想されたが、日本海側の影響が色濃い北アルプスとは違い、晴天率の高い八ヶ岳のこと。仮に低く曇ったその後に前線の通過の影響によって風が
強くなったとしても、荒れ模様が終日続き、しかも里の茅野までもが吹雪いていたとは、ちょっと当ての外れた1日だった。


 真っ白な霧に包まれ、上からは風の音・・・アプローチの緊張感で、怖い顔になったSさん


 出発時、鉱泉の前で外気温は−10℃近くでこれは予想どおり。
 さほど暖かくもなく寒くもないはずの気温ながら、湿度が高いのか深い霧に包まれた朝。

 朝食前に早立ち予定の、久野率いる中山尾根パーティーは、この霧の中へ発つことを出渋っている。
 待機していたはずの久野達はいつの間にか居なくなり、「無理せず南峰リッジに変えるかもしれない」とも言っていた久野だが、これは中山尾根に行ったのだな?と思い、別個でスタート
した。

 早くに発ったらしい赤岳の人々が、次々とすれ違う。まだ往復して来られる時間ではないだけに、敗退してきたのだろう。森林限界を越えていない文三郎尾根でも、吹き抜けてくる風によ
って、上がいかほどのものかが予想される。

 「回復・・・しないですねえ」深く沈んだ霧の中を見上げ、歩きながら呟く私に、「仕方ないですよ。行けるとこまで行きましょう」と言ってくださるMさん。

(え?そうなんですかぁ?)実は私、行く気満々だったのですが・・・



 行く先がピッチを切る主稜や中山尾根だった場合は、止まる時間も長いので凍傷の危険があります。しかし南峰リッジであれば、ショートロープで常に同時に動き続けるために、体力さえ
問題なければ一気に山頂まで登り抜けることが可能です。
 昨日までのお二人の体力であれば問題ないと踏んで、そのまま進んだ。

 実際には風も八ヶ岳としては凄い訳でもなく、酷寒というほどでもない。
 けれどその半端な気温が、湿った雪となって顔や体を濡らし、その濡れた肌に容赦なく刺すような風が吹き付ける。
 いつもはもっと雪に覆われているはずの南峰リッジは、左へ右へと巻いても、そのトラヴァースバンドに雪が浅く積もるのみで、アイゼンの爪先でその下の石屑を捉えようとするのが不安定
だ。



 お客様の場合となると、この様な状況では既に余裕もなく、斜面に張り付くのでアイゼンの爪先が岩や石を捉えられずに崩してしまっては焦り、フカフカの雪に包まれただけの浮き石を剥
がしては慌てで、もう必死でしかない。
 こういった荒れ模様の岩場で、昨日の正確なアイゼンワークを思い出して実行に移すのは、まだ初めての経験なだけに、出来なくても当然なのだから仕方ないだろう。

 様々な状況での経験の積み重ね、そして体力によって生まれる余裕から、どんな状況にも対応できる精神力は生まれてくる。
 この荒れたさなかでの体験は、今後のお二人に登山にとって、きっと活かされていくはずだ。


 しかし、そこで自分の能力を測り違えてしまうと遭難は起こる。
 経験の積み重ねと遭難は、実は紙一重だ。
 そのことを自覚して判断することが大切なのだから。


 女性は独特の粘り強さを持つ人が多いのですが、流石に男性は、持久力そのものがあります


 最後の核心部の狭い凹角は、逆に岩が良くでていた分、いつもより足場が解りやすく楽だった。が、岩登りの経験が僅かであることと、既に天候によって気持ちがくじけていたであろうお
客様の目には、手掛かりの無い絶望的な凹角として映ったようだ。

 「もうアックスを振れば効きますよ!」
 「足場ですって、手掛かりは無いです!」

 そうですよね、初めてのバリエーションがこの天気じゃね・・・・と、やや気の毒になりながらも、速く抜けなければと先を急ぐ。

 視界が50メートルも効かないような吹雪の中では、この凹角を抜けてもう少し登れば、山頂の祠の裏に出ることが解っているのみ。かろうじて見通せる視界の中で、何となく雪が繋がって
いる場所を選んでは登っていく。

 「そろそろ抜けてもおかしくないけどな・・・」フッと、岩屑の斜面が途切れて、同じ白でも空間の抜け方が違う先が見渡せた。
 「あ、稜線?」祠の裏のリッジに出たのだ。

 山頂には人影もなく、新しい踏み跡すらない。
 多くの人が山頂までは来ないで引き返したようだ。私たちも早々に、再び文三郎尾根へと下っていった。

 実はこの後ろにさほど間をおかず、中山尾根から転身した久野達パーティーが居ることも知らずに・・・それくらい視界の無い赤岳でした。


 「ちょっと凄かったですね、でも良かったです」と語るお客様。
 「風は収まってきましたね」いえ、それは樹林帯まで降りたからなのです。上はまだ吹雪きでしょう。


 大変だったかもしれませんが、メンバーの力量によっては、バリエーションには踏み込めない天候でもありました。その中を登り切ってきたのは、あくまで自分の手足です。きっと良い経験
となるでしょう。


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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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