八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。


 2010年10月  北アルプス・無雪期 前穂高北尾根〜明神岳縦走        

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 一口に「前穂高北尾根から明神岳主稜の縦走」と言っても、その行程を涸沢からこなし、岳沢を経て上高地へ一日で下山するのは容易なことではありません。通常なら一日掛けて前穂北
尾根のみを登り重太郎新道から下山するのが一般的な行程であり、明神岳の方も東稜などから単体では登られています。
 穂高岳は登山道のある「奥穂高岳から西穂高岳」の稜線でさえ、岩が安定せず浮き石が多いので、気を使う難路です。

 前穂高北尾根も、一端人の踏み込まない側へ入ってしまえば、手掛かりや足場の不安定さに細心の注意を払い、明神岳に至ってはそれが下り気味になることから、加えて枝尾根に踏み
込む確率が高いのでルートファイティングにも気を使わなければならなくなります。

 常に掴む石や足下に気を配り、ルートを探し続けるこの継続縦走には、屈強な体力は最低条件であり、何よりも長時間に及ぶ精神的な負担が大きいコースとなります。明神岳の主稜線を
離れた後の森林限界の中でさえ、南西稜は切り立った刃渡りのような箇所が連続するので、どうしても気を抜くわけには行きません。足下を踏み外せば、両側に深く切れ落ちた谷底へ草
付きを滑り落ちてしまうので、ロープも最後まで外せません。

 今回のメンバーは、岩登りをしっかりやっている人と、圧倒的な体力を持つ人、そして近頃山に頻繁に通っている人、という男性3名。そして60代後半なのでスピードは無いが、何処まで
も歩く粘り強さを持った小柄な女性一名、という構成でした。
 皆それぞれに苦手分野と得意分野がはっきりしているため、アプローチでは苦しそうなのに岩場になると俄然早い人、岩場は遅いけどなかなかバテない人と、皆この長大な行程の中で
自分の特性を活かした行動をしており、なかなか見ていて面白い山行となりました。

 
紅葉シーズンの涸沢は賑わってます

暗闇の涸沢小屋を3時に出て、今年はまだ雪渓の残る涸沢を横切り「56のコル」へ向かう(相変わらず意外とここが長い)
コルからはまだ暗いのでヘッドランプを付けたまま装備を用意し、ロープを繋ぎ5峰を登る、「前穂高北尾根」のスタートです

 
朝日が斜面を染める頃には4峰の辺り、そして3峰の核心(高所には強いが岩場の苦手なSさんは、苦労して攀じ上がってます)

 
錦の紅葉に彩られた涸沢を足下に高度感は抜群です           3峰から2峰の下降点へ

 
前穂高岳山頂の久野パーティーから見た、2峰を下降中の加藤パーティー(右:横尾尾根を背景にした前穂高北尾根・2峰と3峰の全景)

 
前穂高岳山頂に到着!一休みの後は、明神岳へ向けて新たなスタートです
とりあえず縦走になるので、ロープはコンテで繋ぎ、前穂高岳を後にする( 後方が前穂高岳の頂上です) 

 
明神岳主峰に向かっての下降

 
初めは明瞭な踏み跡も、次第に解りづらくなってきた            下るのだから楽?イエイエ、岩場は下る方が難しいのです

 
東稜から抜けてきたらしいパーティーが、山頂を後にして下っていく姿も見えた
明神主峰までは岩稜縦走だが、2峰3峰では再び登攀の要素が出てくる

 
ロープは再びダブルの末端に繋ぎかえ、カムで支点を取りつつ登る  
室内ジムにも通っていて、脆い箇所では咄嗟に岩を押さえる動きが出るところが流石のHさん
極端に厳しくはないが、どんな山にも岩登りの技術は欠かせない
(技術が未熟な場合は、更に人工落石に対する精神的負担が加わることになるだろう)

 
主峰から2峰3峰そして4峰と、その間の小ピークも加えてアップダウンは何処までも続く

 
漸く明神岳主峰が遠ざかり、上高地が何となく近づいて来た      こんなに沢山のピークを越えてきました(感慨深く振り返る加藤パーティー)

 
アップダウンを繰り返すだけに、高度はなかなか下がらない        森林限界下まで下っても、まだまだ左右に切れ落ちたナイフリッジが続く

 
この南西稜を往復するだけでも、侮れない困難な箇所が続き、気を抜ける場所までなかなか下山できない

ここまで来ると屈強な男性陣にも疲労の色が現れて来たが、女性のSさんも久野に付き添われながら、速くはなくとも付かず離れず付いてくる。
(さすがは水戸出身、その粘り強さは納豆並みなんでしょか?)

やっとのことで合流した登山道には、最終バスのため急ぎ足で駆け下っていく一般登山者達の姿が見られたが、漸く危険な行程と精神的な困難から解放された私たちは一休み。
終バスギリギリの時刻だったので、唯一平湯方面に車を置いてきたNさんは、ここから駆け去っていった。
沢渡の私たちは最悪タクシーさえ捕まればOKだ。

上高地には十五夜を迎えて間もない、まん丸の月が昇っている。河童橋の雑踏も流石になく、静けさに包まれた橋を渡ってタクシーの確保に急いだ。まだバスは居たが、全員が揃う間もな
く発車していった。
ここで久野と私たちの間に居たはずのHさんが行方不明?何と林道を逆に遡ってしまい、通りすがりの車を止めてバス停に戻ってこられたという。
でもHさんの機転のおかげで、何とか林道のゲート閉鎖には間に合ったのでした。
もう林道だからと気配りが足らず、申し訳ないことをしてしまって本当にすみませんでした。登山はやはり、最後の最後まで気が抜けませんね。。

誰もがたっぷりの疲労と、そして充足感を得られたこの縦走。涸沢の紅葉も、奥又白や岳沢の紅葉も、眼下に広がって居たはずなのだけれど・・・
緊張感の連続であまり視界には入ってこなかった。
と、いうくらいの、精神力を要求されたコースなのでした。

それでも体力、ルートファイティングに、危機管理と、総合力を要求される長大なこのコースの経験は、今後の皆さんの登山に大きな影響を与えてくれることでしょう。


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