西はフランスから、北はオーストリアやイタリアにまたがる、長大なヨーロッパアルプス。
そのイタリアはドロミテ山塊の岩峰の数々と、その麓に広がる牧草地帯は、短い夏を迎えると同時に、見渡す限りの高山植物の宝庫となります。
国内で長く雪山や夏山、クライミングを、そして国外でも、フランスアルプスやペルーアンデス,ドロミテ、クロアチア、ギリシャなどにおいて、自らがクライミングを実践してきた山岳ガイドならではの、団体ツアーでは決して訪ねることの出来ない場所へ、ご案内をさせていただきます。
いくつもの峠を越え、谷を歩き、自分の足でしか辿りつけない、宝石のような山上湖を目にする感動。
ドロミテの岩峰群を仰ぎ見るだけに留まらず、ビアフェラータでその頂上を足元にする喜び。
麓の牧場から吹き上がる風と共に乗ってくる、放牧の牛たちの奏でるカウベルの調べ。
山奥の山小屋で食べる、本格的なチロルの伝統料理や、小屋ごとに焼かれるタルトなどの焼き菓子。
それらと共に供されるエスプレッソやカプチーノ。
ヨーロッパの山小屋と一口にいっても様々で、例えるなら富士登山の山小屋のように、登山のために寝るだけのものから、そこへ行くことが目的となる山小屋もあります。
マッターホルンやモンブラン登山の山小屋前者であり、イタリアの山小屋は後者で、そのため景色が良い処に立っている事が多く、美味しい食事やデザートをその形式と一緒に楽しむことができます。
イタリアらしく時間はかかる場合もありますが、周りの景色を考えればこの待ち時間自体が楽しむことができます。
歩くのには自信があるけれど、クライミングはできない。高所での行動に不安がある。
だけど海外での登山はしてみたい。
4千メートルの高所登山なんて自信は無いけれど、巨大な岩のてっぺんに行ってみたい。
そんな方にお薦めの、決してトレッキングツアーだけには留まらない。
山岳ガイド主催のドロミテの山旅は如何でしょうか?
ヴィアフェラータ
クライミングの苦手な方は、ケーブルを辿ることで岩峰に登頂できるビアフェラータがおススメです。
これは日本での一般登山に近いのですが、子供を伴い半日で気軽に行けるものから、第一次世界大戦時の遺構である塹壕を巡り歩く博物館的要素を持ったもの、小屋と小屋を繋いだり渓谷や岩峰、山上湖を繋いでいく本格的なロングコース。
また同じく前述の大戦時の遺構である塹壕戦の経路を利用するのであっても、巨大な岩峰の「あんなところに人がいる!?」というレベルの、本格的登山に至るまで、ヨーロッパでは様々なコースが人気を博しています。
ドロミテのヴィアフェラータの特徴
フランスにある登山やアトラクショの一部としてではなく、今から110年の時を経た歴史上、実際に当時の兵士たちが利用していた、第一次世界大戦時の遺構を利用していること。
もしくは純粋な登山のための手段として、利用されているものが多いことだと思います。
ヨーロッパにヴィアフェラータは数多くありますが、岩場でのアトラクションとして作られたものが多く、ドロミテの様に頂上を目指すために存在しているものは少ないといえます。
ドロミテは、山といえば岩山であるため、その頂上を踏もうとするとクライミングが必要となってしまいます。
しかしワイヤーや梯子を張り巡らすことで、クライミング技術や経験の無い方でも、そんな岩山の頂上までたどり着くことができます。
2025年の登山&谷を繋ぐトレッキングツアーの募集を開始します。
ガイド費用 40万円 (クライミング7日間、現地8泊、出国から帰国まで11日間)
※別途、滞在費(=ガイド経費)、現地費用、ご自身の航空券費用などが必要です。
航空券を除いた総費用の目安 50万円程度を目指します。
昨今の物価上昇、円安を考慮した料金を提示させていただいています。
今後、為替レートが円安、あるいは円高に移行した場合は料金を見直します。
お越しになる方の費用をトータルで抑える工夫が、アパートの利用です。
ホテルに泊まって外食をすると、意外に高額(2023年7月平均:一泊朝食付きで最安で17000円以上、夕食3000円以上)になるだけでなく、滞在中、温かい飲み物を飲んだりするにもお金が掛かり、冷蔵庫も無いため飲み物を冷やすこともできず、とても不便です。
アパートに泊まっていただくことでこれらの不便を解消できるだけでなく、現地の食材を自分たちで調理したり、ホテルではできない経験が可能です。
メリット1 費用が抑えられる
私たちが滞在するアパートに「同居」していただくカタチによって以下の費用が押さえらえます。
・私たちの滞在費と食費、つまり、お客様に請求しなくてはならないガイド経費
・お客様の滞在費と食費がホテル、外食に比べて安くなる。
つまり、皆さまの宿泊費としていただいているのは、ガイディング中の私達の滞在日、つまりガイド経費と思っていただけると良いと思います。
私たちの仕事はガイディングであり、アパートでの宿泊、食事などは範囲外なので、参加された皆さまには掃除や食事の準備などはシッカリと手伝っていただきます。
メリット2 1人1部屋利用できる
多くの海外登山、クライミングツアーが二人で一部屋での滞在となりますが、アパート利用の場合一人一部屋を使えるのも大きなメリットです。
滞在費の目安の目安
2024年12月の為替(1ユーロ160円、換金レート実質165円)で計算しています。
お客様お一人で一部屋の利用
6月、7月のみの滞在の場合 12000円 (8月になると1割から2割高額になる事をご了承ください)
食費 お酒込みでお一人、2000円程度
2024年12月時点の円・ユーロの為替状況と現地の物価上昇等から、5年前と比べて大きく変わってしまったこと、ご了承ください。
また、滞在費(=ガイド経費)はお越しいただく日程の為替で上下します。この為実質の換金レートが今よりも円安、あるいは円高になった場合はそれを反映した料金とさせていただきます。
ガイディングについて
何処かのルートを登ってツアーは終わりではなく、「ドロミテで毎日遊ぶ」ことを目指しています。
もちろん、お越しいただく方の「ここ登りたい」という希望は可能な限りお応えしますが、天候やコンディションに合わせて、毎日登ったり歩く事を優先します。
実際、天気が悪くない限り、そして午後からの夕立があったとしても、ルートや時間を上手くやり繰りし、毎日登って歩く事になります。
これこそが、ドロミテで過ごす醍醐味です。
費用の目安
2025年の為替、レンタカー費用、航空券などによって変わる可能性があるため、あくまで目安ですが、以下の通りとなります。
参加者がお二人の場合のお一人の料金
ガイド料金 出国〜帰国まで11日間 (現地8泊 行動7日間+空港間の移動2日間) 45万円
航空券以外の総費用の目安 約50万(ガイド料金40万円、滞在費と食費11万円)
プライベートガイドをご希望の場合
ガイド料金 出国〜帰国まで11日間 (現地8泊 行動7日間+空港間の移動2日間) 75万円
航空券以外の総費用の目安 約80万円 (ガイド料金70万円、滞在費と食費11万円)
その他、行動中のガソリン、高速料金、駐車場料金(1万5千円程度)、山小屋利用の場合の宿泊費、ロープウェイを利用した場合の費用が必要となります。
他に比べて高い?
ドロミテでは毎日行動することになるので、一概には比べられませんが、フェラータと言っても少し歩くだけを一日程度、などの国内のツアー会社よりも、長くこのドロミテで登ってきた山岳ガイドならではの経験に基付いた、様々なレベルや多彩なルートへのご案内が可能です。
また経費が抑えられる分高いことは無く、むしろ2割〜3割は安くなると思われます。
ヨーロッパで登山してみたいと思う方には私達の行うドロミテツアーは良い選択肢だと思います。
日本出発から到着が11日間の場合のモデルコース
※深夜便を利用すると、出発から到着まで10日間となります。
1日目 日本出発
2日目 ベネチア到着後 ドロミテ西部、カナツェイに移動 移動後、時間があればトレッキング
3日目〜9日目 現地7日間のビアフェラータ含めたトレッキング
以下のルートをお勧めしますが、他にもたくさんあります。
※基本的には現地でコンディションに合わせて行動を決めます。
・カナツェイ周辺のビアフェラータ
トライデンティナ
サッソルンゴ
グランサール登頂
コラック登頂
・コルチナ周辺
トレチメ(ドライチンネ) 近辺
トレッキングロングルート
ヴァイオレットの谷からアンテモイア湖
10日目 ベネチアへ移動、日本への帰国便
11日目 日本到着
費用
ガイド料金:お一人40万円(参加者三人の場合)
現地費用
宿泊費 1日 1万2千程度
食事 2千円程度
(野菜をより多く採っていただくため、アパートでの食事をご用意しますが、外食も可です)
その他費用
山小屋を使用した場合の宿泊費
ガソリン、高速料金、ロープウェイを含めた現地交通費(お一人3万円程度)。
日程、ルートは天候、コンディションによって最適な場所へ行きます。
天候が悪い場合はクロアチアやアルコ周辺に移動する可能性があります。
ドロミテ予備知識
ドロミテはイタリアの北東部、長いブーツの形をした国土のちょうど、ブーツの後ろ縁、膝の裏辺りといった感じでしょうか?
このドロミテのある南チロル地方は、ハプスブルグ家、イタリア、フランス、ドイツなど、様々な巨大国家に編入されてきた過去を持ちます。当時はオーストリアとの国境だったこともあり、第一次世界大戦中は酷寒のアルプス山中で塹壕、要塞戦が繰り広げられた場所でもあります。
ドロミテまたはドロミティとは、石灰岩が海中で変質した岩石・ドロマイトを発見した人物の名を由来とし、このドロマイトの巨大な岩峰が林立する景観は世界でも固有のものであり、ヨーロッパアルプスの東の端に当たります。
ヨーロッパにおいてはクライミングの聖地であり、昔は貴族階級の遊びと挑戦の場であったアルプスの高山に対し、貧しい階級から出たクライマーでも腕を競い挑戦し、自分たちの力を世に問うことの出来る場であったらしい。
これによってチロル地方では、戦前から盛んにテクニカルなルートが開かれ、またメスナー兄弟などの能力の高いクライマーを輩出しています。
ドロミテを勧めする理由
ドロミテの特徴は、高所の影響を受けにくいことと、天候、天気の悪い時の対応がしやすいことが挙げられます。
ヨーロッパアルプスというと雪山と4000mを越える高山をイメージすると思いますが、ドロミテも立派なアルプスの一部です。しかし、標高は3000m以下、雪がついていることもほとんどありません。
高所である場合は高度の影響を考えて行動せざるを得ず、時差ボケがある場合は更にその影響が大きくなります。このため、どうしても高度順応や時差対策などでスケジュールが制約されてしまいます。
しかしドロミテは壁は大きくとも標高は無いため、到着日や移動日も登ることができます。
天候的にはヨーロッパ全土がよっぽど変な気候にならない限り、基本的には毎日登れます。たとえ朝方雨でも、午後には登れるルートが沢山あります。
しかし天気が悪い時は車という機動力を活かして別のエリアに移動する事で対応が可能です。
ドロミテは基本的には他のアルプス地域と同じ気候に属していますが、陸路での2時間から5時間ほどの移動で、全く気候の異なる、アルプス地域以外の大きなクライミングやトレッキングエリアに移動することができます。
飛行機や列車などを利用せずに、全く気候の異なる地域に行けることはドロミテの大きな特徴の一つです。
代表的なエリアは、まずはイタリア・アルコ(Arco)。
ドロミテ西部からなら2時間以内で到着することができます。
イタリア北部のこの古城の町は、クライミングを中心に成り立っているといっても過言ではありません。
もちろんビアフェラータルートもあります。
次にお勧めするのは、アドリア海の国、クロアチアのパクレニツァ(paklenica)。
ドロミテからは5時間ほどと、少し遠くなってしまいますが、その代わりに環境は抜群です。クロアチアのパクレニツァ国立公園内にある岩壁群がその対象で、アプローチが短いのが特徴です。
また、この国立公園はアドリア海に接しているため、海沿いの宿に滞在、公園内でクライミングやハイキング、そして海を見ながら食事というリゾートライフを楽しむことができます。
もしご希望であれば?ドロミテのクライミング 5.7程度のレベルからたのしめます!
ドロミテでのクライミングは高差150m〜1000mのマルチピッチクライミングが中心。その本数は正確にはわかりませんが数千本というレベルだと思います。
ガイドブックも多く出ていますが、そもそもガイドブックに載っていないルートも多く、現在であってもルートが増えています。
もちろんショートルートエリアも沢山あり、天気の悪い日だけでなく、コンディショニングにも最適です。
ドロミテの岩質はドロマイト。これは石灰岩に鉱物が混じったものです。普通のよくある石灰岩に比べて硬いのが特徴です。そのため傾斜が強くともホールドが豊富です。このため300m以上に渡って垂直以上の傾斜を有する壁もあります。
そんなドロミテの壁でのクライミングはスポーツルートとクラシックルートに分けることができます。
スポーツルートは大きく分けて二つに分類できます。
@ボルト間隔が比較的短く、基本的に必要な装備はクイックドローだけのルート
Aボルト間隔が極端に遠く、カムやナッツなどでプロテクションを取らなくてはならないルート
@のルートはボルト間隔が3メートル〜5メートル間隔で打たれているので、クイックドローだけで登ることができますが、間隔が短いといってもショートルートに比べればかなり広いですし、グレードが下がるとさらに広くなります。
ですからやはり少しのカムは持っていた方が良いでしょう。
Aのルートは大きな壁で展開されるルートによくあるパターンです。
ボルト間隔は例えば5.11を超える場合でも、本当に必要な部分にしかなく、かなりのランナウトを強いられます。カムやナッツは必須ですが、必ずそれで支点が取れるとは限りません。
ですからグレード以上の能力を持って取り付く必要があるのですが、そもそもドロミテのグレードがかなり辛いという事も忘れてはいけません。
ドロミテのクラシックルートは単に古いルートという訳ではありません。
ドロミテの壁はドロマイトという石灰岩の一種で構成されています。このため、ハーケンの喰い付きが良く、2000年以降の初登攀であってもハーケンを使用して登られています。
また、ハーケン仕様だからグレードが低くクラシックルートという訳でなく、ハーケンを使用していてもグレードが5.13を超えて連続するルートもあります。便宜上クラシックルートという言葉を使用してはいますが、ハーケンを使ったルートであってもグレードは様々です。
いずれにせよ、クラシックルートは壁の弱点を登るルートが多く、そういう意味では自然なラインのルートが多いのが特徴です。
ドロミテの壁は傾斜が強いのに、ホールドが多く大きいのも特徴です。このため、グレードが低くとも傾斜が強い壁をグイグイ登ることができますが、基本的にはフェイスクライミングが中心になるため、ルートファインディングが難しくなります。
クラシックルートの面白さはスポーツルートと違いボルトや残置物を追って登るのではなく、壁の弱点を自分で探しながら登るというところにあります。しかし、これは逆にルートファインディングが極端に難しくなることも意味し、弱点を突いた結果、ルートを外してしまうということもあります。
クラシックルートを登る際には人気ルートでない限り、残置物を追えばルートを外さないという事は無く、確実なプロテクションワークと自分の強い意志をもってルートを見つけることが必要となります。
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