八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属


 2009年10月他 八ヶ岳・無雪期 稲子岳南壁左カンテ        

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2009年10月14日


黄金色に輝く唐松に縁取られた「稲子岳南壁」(中央のリッジが左カンテ)

 久しぶりに歩く森林軌道沿いの登山道は、深い緑の苔に覆われた落ち着きある風情を漂わせ、何か北ヤツ再発見という感じでとても快適に歩けた。やはり八ヶ岳東面は、同じ八ヶ岳でも
賑わう西面とまったく異なる趣を見せてくれる。

 
昭和初期に、材木の運搬に使われた森林軌道の跡を辿る登山道  固定客のファンも多い、北ヤツの森にたたずむ小さな山小屋「しらびそ小屋」

 
小屋の窓からは、緑池にその姿を映す天狗岳や、稲子岳の南壁が望まれる

 
小屋を訪ねるホシガラス                           年中無休で営業する「しらびそ小屋」では、今冬に備えての薪割りで忙しい

 
これから冬の訪れと共に全面凍結して、雪原に姿を変える緑池      稲子岳南壁基部から望む、天狗岳東壁

 
稲子岳へのアプローチは、この秋の台風によってだろう・・・大きく崩れ去っていた

 
崩壊地を乗り越えると、そこは輝く唐松の世界               黄葉と岩のツツジの紅に彩られた稲子岳の岩壁

 
登って嬉しく、振り返っても、また嬉しい

 
他には誰も居ない山、誰も居ない岩、自分たちだけのパノラマです



2009年9月10日&13日


中山峠から稲子岳南壁を望む(北八の深い緑に包まれた、岬のような稲子岳)

 
稲子岳南壁左カンテ全景                           苔の絨毯が広がるアプローチ

 
静寂の日本庭園を歩く                              2ピッチ目オープンブック

 
2ピッチ目を終えて                                空へ向けて登る4ピッチ目

 
5ピッチ目は体の振りで
 

    行き着く先は、やっぱり「空」でした

 
緑いっぱいの森に包まれた北八ヶ岳                     振り返れば、硫黄岳や天狗岳が見守っていました





2009年8月24日(火)



 北八ヶ岳を訪ねたことのある人なら、主稜線から見下ろした佐久側に連なる稲子岳の頂は、気になる存在だろう。深い森の中に沈む北八には珍しい、切り立った岩壁を有し、かつ地図上
にも登山道は記されていない。
 
 この稲子岳南壁は、かつて古い時代には登られていたのだが、その脆さ故、今はわざわざ訪ねる人も希だ。しかし、この壁の中にも落石を避けた岩稜に開かれた好ルートがある。

 もともとこの稲子岳は、何人かのお客様からの要望もあったので、ちょっと見てまいりました。


唐沢鉱泉の源泉が創り出す、神秘的な色彩です


アプローチは諏訪側、唐沢鉱泉から黒百合ヒュッテ経由で行けば2時間30分ほど。山のルートとしては近い方です。


 前日の大同心日帰りに、その前は小川山の連ちゃんで、流石に疲れが出始めた体を動かして登山口の唐沢鉱泉へ着いたのは、昼の12時だった・・・←(模範的な登山者の皆様は真似
しないで下さい)

 「ま、行きますかぁ」と歩き出すも、肩に食い込むザイルの重さ、・・・っていうか「体」重いです。
 徐々にスピードが乗って黒百合ヒュッテに到着。
 八ヶ岳は、特にここの登山道は、やっぱり冬の方が歩きやすい。
 

何処までも、苔の緑が美しい北八の森


 中山峠を下って壁の基部へ。
 壁全体の基部を歩いてみたが、目標の左カンテ以外はどれも脆そう。でも冬なら、八ヶ岳らしからぬ、かなり充実したクライミングが可能だろう。
 今度は東壁側(高差250メートルはあるらしい・・・ホントだろうか?)も訪ねてみたい。

 支点はクラックがあるのでカムで十分取れる。なのに古い残置はともかくも、ピカピカの残置ハーケンやリングボルトが新たに打たれているのは、どういう事なのだろうか?昔の限られた装
備と技術で、ここにルートを開いたパイオニア的クライマーの人々に対する冒涜だと・・・そう思うのは言い過ぎなのだろうか。
 そうでなくとも、これぐらいのレベルで、残置支点に頼らない本来のクライミングを経験できる岩場は貴重なので、大事にしてもらいたいものです。

 どう考えてもこれを登るのは危険だろうと思われる中央フェースを間近に、「やっぱり昔の人は凄いもんだ」と、感心半分、呆れ半分にボロ壁を見上げる。


なかなか見た目にも格好いい、稲子岳の岩稜です

 いろいろと偵察した分だけ、もうこれから登ったのでは下山は暗くなる時間だと予測されたが、翌日も小川山の久野に強引に頼んでスタートした。
 「1時間で登るよ!」
 急いでつるべで抜け、コマクサの保護ロープのある稲子岳山頂へ。


岩は場所によっては丸ごと抜けそうな浮き石(岩?)もあるが、そんな処も概ね前穂北尾根に似た感じ。


プロテクションは随所に取れるので問題ない。ロケーションも良く、カンテの上を行くので高度感もあって、風を受けながら気分良く登ることが出来る。


硫黄岳の爆裂火口や天狗岳の東壁を背後に望みながら登る5ピッチは、浮き石にさえ気を使ええれば、初めての人にでも何とかこなせる傾斜であり快適だ。

 ただしアプローチは、初見で取り付くにはちょっと難しいかもしれない。


頂上まで岩が続いています。

 山頂部はコマクサの群落となっているため、ここには最も気を使いたい。小さな株もあるので、細心の注意を払って歩みを進めよう。踏み跡以外には足を踏み入れないよう、最短距離でグ
リーンロープの中にはいるようにしよう!
 コマクサは砂礫が動くことで、その根が切れてしまい、生きてはいけなくなります。株が地表に出ていなくともがなくとも砂礫の中にはコマクサが有るかもしれないのです。
 ここに来る方はこれらに注意してください。


 一度は消滅したコマクサも、何とか復活してきた稲子岳。大事にして、「立ち入り禁止、クライミング禁止」なんて事にならないようにしよう。

 グリーンロープの内側に入れば、あとは再び北八の緑の苔を楽しみながら帰ればいい。

 黒百合ヒュッテに戻ると、夕食を終えた厨房では、主人のTちゃんが立ち働いていた。
 久しぶりで立ち話して、暗くならない内にと下り始める。

 でも、やっぱり渋ノ湯との分岐あたりで暗くなり、深い樹林帯では月明かりもない闇に包まれた。

 苔生した岩に木の根っこ。
 かなり歩きづらい登山道に辟易とした頃、携帯メールを打つのに立ち止まった久野よりもかなり先行して歩いていた私は、「ちり〜ん・・ちり〜ん・・・」という、空耳のような鈴の音を耳にす
る。

 「ウ、わ〜ぁ、で、出た?」

 霊感には疎いが、滅法、怪談話にゃ弱い私は、思わず身を引いて闇に目を凝らす。
 すると、僅かだが、ライトの灯りが見え隠れした。
 「まぁ、誰か後ろから来てくれたわ!」という声に、こちらは「良かったぁ・・人間じゃん」

 5人いるのに、灯りはペンライトが一本?

 「朝の8時には唐沢鉱泉を出たんですがねぇ、こんなに遅くなるとは思っていなくって」というおっしゃるオジさんは、
 「どうぞ、大丈夫ですから先に行って下さい」と言われるが、どう見たって大丈夫なはずもない。
 辺りは完全な暗闇でしかなく、足下は悪い。

 一緒に照らしながら下山したが、唐沢鉱泉に着いた時は女性が泣き出してしまったし、雨も降り出した。

 車で降りる頃には雨足も強くなり、日中に日差しを受けた地表からの水蒸気で、深く濃い霧に包まれた。

 とりあえず、何事もなく済んだけれど・・・
 少なくとも八ヶ岳に、鈴は要りませんから・・・ライトは持っていきましょうね。
 どんな時にも。

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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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