八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。

 2008年 5月  山スキー 日本オートルート後半日帰り        

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日時: 2008/05/23(金) 

 穂高のロケーションが良い双六岳から双六谷へ
(静寂の春山には、全行程を通してまったく人影はありませでした)

今期2度目の飛越新道登山口。今回は縦走であるため、初めから2台の車で下道で来た。
途中カモシカスポーツで久野はスキー靴を新調。ガルモントのアドレナリンでご機嫌だ。
まずは一台を新穂高無料駐車場にデポ。地元Y村ガイド氏の車も来ている。そのお隣に駐車して山の村へGo。

飛越トンネル1`ほど手前にあったデブリが6月の有峰林道開通を目指し、除雪されていることを祈りつつ、暗くなった林道を急ぐ。

やった!重機がまさに除雪の最中であるらしい。何とか四駆で通過する。 

流石にこの時期の平日とあって、登山口に他の車は見あたらない。9時就寝2時起床。
3時出発・・・のつもりが、「ああ〜っ」と、久野。
買ってきたばかりの靴にビンディング調整をしていなかったのだ。(・・・よくこれでお客さんを叱れるな?)

そうこうで03:20の出発。今回は運動靴だから、担ぐ分だけ靴と板は重くとも、歩きは軽快だ。

 
靴下もずぶ濡れ、田圃のヌカルミと化した飛越新道から、やっと「雪の世界」へ脱出です


先週来た時はまだ雪があり自由に歩けた1700メートル付近では(尾根が大きく北東へ向かう地点)、ここしばらくの雨によって背丈台の笹藪が現れていて行く手を阻まれる。藪を掻き分け
て探し出した夏道は、標識からかなり西寄りに向かって付けられていた。

どう見ても雪は途切れているようなので、背負ったまま寺地山まで歩くが、雪解けが進んでいるため足の付け根、股まではまることも度々。時折現れる夏道を求めつつ歩いてもその夏道も
ぬかるみが酷く、閉口ものだ。
とてもこの状況で往復は考えたくはないけれど、上空には寒気が入っている証拠に、鱗雲が広がっている。
もしかして・・・北ノ俣岳で携帯を使って気象をチェックしたが、今日は何とか保ちそうだ。

 
左/吹雪の日には、きっとこの標識が救いの神様となるのでしょう   右/地糖輝く北ノ俣岳への木道


北ノ俣岳の斜面には木道が現れていて、傍らにはつぶらな地糖が輝いている。這松も大分現れ始めていたがまだ巻けば通過できる程度なので、木道が途切れた地点で漸く荷を降ろして
板を履くことにした。

北ノ俣岳まで登れば黒部側の山並みが一望だ。先日来たばかりだけれど、やっぱり奥黒部はいい。山以外の何も見えない奥深さがある。

 
左/北ノ俣岳の山頂へはもう一息(這松に覆われているようですが、少し迂回すれば雪は繋がっています)
右/北ノ俣岳と赤木岳をバックに(板が潜って長いトラバースが進まない)


北を見れば大輪の夕顔、薬師岳。ここから見る雄山は台形ではなくい姿良い山頂を見せ、それにも勝る均整のとれた三角形が剱岳。
黒部側の中央に位置するのが水晶岳で、その手前に広々と横たわるのが雲の平。その間には深く切れ込んだ黒部川源流がある。

気持ちの良い赤木平へ向かって、思わず飛び込みたくなるのだけれど、残念ながら今回はあくまで縦走なのだから、先は急がねばならない。

何段もの滝を重ねる赤木沢も、まだ深い雪の中に埋もれている。中ノ俣乗越しまでは板が潜って進まず意外にロスをした。大ノマが固くならない時間から逆算してスタートしたけれど、やっ
ぱり更に早く出るべきだったか?
でも基より、複雑な尾根を重ねる飛越新道が藪に遮られるこの時期、暗くては道を誤り易くもあるだろう。

 
「すぐそこ」に見える割には、意外に掛かる黒部五郎岳への登り返し


黒部五郎岳の登りは、充分板で登れる幅で雪があったけれど雪質が悪く、表面の新雪分だけ板がずれて歩きづらそう。板のセットを加えればどちらでも同じ時間は掛かりそうだったけれど
夏道とする。

 
左/新雪に覆われた黒部五郎岳山頂   右/滑れば足下から雪崩れ落ちる斜面も、名人芸ならば雪崩れに乗って滑れるのだとか?


黒部五郎岳からカールへのエントリーを探すも、山頂直下は流石に岩が露出しており、上部からでは雪の繋がりは確認できない。
一段下がった肩から入った。そこまで下りるだけで既に雪崩を誘発している。
カールへは「トラバースばかりで靴が試せない」そうぼやいていた久野からスタート。滑り降りる周囲の雪がどんどん動く。
次に私が動く際には、表面はかなり落ちて固い層が露出していたのでまだ幾分滑り易かった。雪庇はまだ全て落ちきっていないので、頭上を仰ぎながらトラバースを切っていく。

 
左/巨大な雪庇の崩落する黒部五郎岳のカール内    右/カールの底へ向かって歩いていった、爪痕も鮮やかな熊の足跡


 と、その行く手を横切るようにカールを下っていくトレース?深い爪痕もそのままに残る、新しい熊の足跡だ。滑らない板を押しながら、何とか黒部五郎小屋に到着。

久々に訪れたけれど、やっぱり居心地良さげな冬期小屋なのです。
さてこの時点でもはや正午。地図のコースタイムでは三俣蓮華まで登るだけで、地図の所要は2時間20分と来たものだ。
まだ先が測れない距離だけにゆっくりもできない。

 
左/眼下の黒部五郎小屋(バックが登り返しの斜面)   右/冬期避難小屋の中は暖かです


ここから登り返し始めてすぐ、また熊の足跡発見。縄張りの範囲を考えれば、カール内のものと同じ熊だろうか?
なんだか何処かから見られているようだ。

 
左/黒部五郎岳をバックに、再びシールを着けて小屋をスタート  右/三俣蓮華岳まで行動時間は10時間余り・・・あとは惰性か?


1時間30分ほどで案外早く三俣蓮華に到着。地図を確認するも、樅沢の源頭に滑り降りてから双六小屋の鞍部に着くには、巻くはずの尾根筋に這松が出ていて、どうやっても下部での登
り返しがありそうだ。
どうせならばと稜線上の丘をいくつか乗り越し、双六岳側壁のトラバースに入った。(夏の中道ルート)

 
左/鷲羽岳を望む(尾根は大きく曲がりくねり、アップダウンは続く)
右/遙か右後方がスタート地点の北ノ俣岳、中央が滑り降りた黒部五郎岳 


 
左/槍ヶ岳をバックに三俣蓮華岳〜双六岳間を行く  
右/双六岳をまたもトラバース(フランス語だと、縦走=トラバースだから致し方ない?)けど、一体何処で滑るんだ〜 


双六小屋を横目にパスして、小屋のあるコル上部の東斜面から双六谷へ飛び込んでみた。ここで初めて快適なザラメに出会う。
ここまでならば誰か来ているかと思いきや、やはり人影はない。
見る間に傾斜は落ちて平坦な双六池になり、夏道を左に見ながら更に高度を落とす。双六岳南峰と主峰のコルから落ちる谷には多くのシュプールが刻まれていたが、更に下流に合流する
谷は雪崩跡のみだった。どれもそれなりに楽しそうな谷ではある。

 
左/樅沢岳(この左に双六小屋がある)  右/双六谷(ようやく新穂高から訪れるスキーのトレースが、数多く見られるようになった)


大ノマに至る谷は狭く急な印象が残っていたけれど、側壁からの落石もデブリも多くてイヤな感じ。シールがすっかり濡れて付きにくくなったこともあって(そろそろ買い換え時?)坪足に切り
替え上部を気にしながら詰めていく。
乗越しも近くなった頃に、ハテ、またトレース?いえいえやはり熊の足跡でした。

 
大ノマ乗越しもすぐソコにあるようで、本当のノッコシはなかなか近づいて来てはくれない


乗越しには大きくダケカンバが張り出していた気がするけれど、それはやや下部にあって鞍部そのものもやけに広い。あれれ?ここはホントに大ノマ乗越しなのか?地図で確認してもやっ
ぱりここみたい。

それにどう見たって鏡平らからの尾根が合流している、降りられるんだからOKでしょ。既に谷の中は翳りだしているのだからグズグスしてはいられない。

 
左/やっと来ましたラストランのお楽しみ、大ノマからの高差1000bの滑降です

 
左/日は傾き初めても気温が高く雪はクラストしないが、その分落石には警戒が必要だ  右/幻想的な奥抜戸沢


最後はここらには一応古い記憶でも、馴染みのある私からエントリー。
降り始めてから振り仰いでみたら、大ノマでは単に私の記憶より鞍部に積雪が多いのだと気が付いた。
比較的傾斜が緩んだ場所まで、中央の落石帯を越えた北寄りへと順番に二人が滑り込んだあと、後方で岩雪崩が起きた。岩と共に大きなブロックが転がって行く。
その下に居たら緩んだ雪崩とは違って乗るどころのものではないけれど、ホールラインからは既に遠ざかっていたので、それらが何処まで落ちて止まるのかをノンビリ確認することができ
た。

弓折岳と大ノマ乗越し最低鞍部の側壁中央には、既に黒々とした泥壁が覗いており、そこから崩れてくるのだ。

つい少し前に滑ったと思われるシュプールがあった。最後の最後まで他の人と会うことは無かったけれど、それでも入山者は居たようだ。この滑った主は往復のはずだから、これを追えば
帰れたはずなのに、藪を避けたらシュプールからは外れ、雪の繋がりに沿って降りすぎてしまった。

「この期に及んで登り返し?何度も来てんじゃなかったの?」言葉にはしなくとも、苛立ちを隠さない久野の目が訴えている。
「だって〜15年も前の話だしっ」

河岸はデブリで埋まっていたので、登り返して対岸の林道へよじ上るのを久野が主張。私は反対してもと来た位置まで登り返すことを主張し、結局は戻ることになった。再び板を担ぐ。

幸い夏道が見つけることが出来てそのままトラバースで、トレースに合流。先行者も雪が途切れて既に板は履いていなかった。
振り返れば、昔はGW以前にしか来ていなかった秩父沢出合いだけに、大きく藪やモレーンが露わになり、記憶とはかなり違う様相となっていた。そう、もう安全圏だから秩父沢出合いへ
は、かならず押し出しているはずのデブリをさえ辿ればよいと気を抜いていたのだ。イカンいかん。

 
左/雪の途切れた秩父沢出合い(右後方が大ノマ乗越し)   右/最後の林道出合いは、いつも通りの押し出しで埋まっています


林道へ出てもしばらくは支流からの押し出しが幾度も現れ、ワサビ平も近くなった頃合いで運動靴に替えた。双六小屋系列がGWの営業を辞めてしまったことにもよるのか、林道は荒れる
がまま倒木だらけで歩きにくい。

ワサビ平の湧き水は、ただの水でもこんなに美味しいのかと思われるほど、乾ききった喉に染み通る。

暗くなり始めた林道ゲートに到着。ヘッドランプのお世話にはならずに、何とか新穂高温泉へと帰り着くことが出来た。

計16時間。滑るラインの読みや、シールの張り替えなどは日頃頻繁にやらないせいもあって、まだまだ課題のとり組み方によっては短縮できるはず。
後は滑り技術の向上が勿論スピードアップに繋がる。
この縦走、トレーニングの一環としてはもちろん、これからは何に気を付けて出掛けたらいいかを考える、良いきっかけになったと思うのです。

飛越新道登山口にはこれから荒れるというのに、スキーヤーの車が幕営していた。あのヌカルミを板を担いで往復・・・しかも雨で?
深い笹藪であることを教えてあげたかったけれど、眠っているのを起こす訳にもいかないのでサッサと退散する。

GWが明けるまでは繁忙期なので、ちょっと厳しいけれど、来年はぜひ「歩き」じゃなくって「滑り」中心系の日帰りツアーへ。
双六岳周遊にはぜひ行きたいですね。



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