八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属

 2007年 5月  八ヶ岳・積雪期 赤岳主稜 (珍しいGWの記録)       

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GWの八ヶ岳はとっても静か。行き交う人もまばらで、人だらけの白馬でGW前半を過ごした私には、癒しの場になりました。

今年は4月の寒さで標高が3千bを越えたところでは、雨が雪となりました。
4月20日から入山していた涸沢周辺の小屋スタッフに話を聞いたところ、荒天の時期は連日雪が降っていたそうです。
長野県警諏訪署の人に話を聞いたら、北アルプスではGW中、ヘリコプターの出動が相次ぎ大変なことになっているとのことでした。


八ヶ岳にはどちらかといえば、赤岳鉱泉や行者小屋あたりのスノーハイキングの人が多かったのですが、ゆっくり3時間も歩けばこの景観が得られるとあっては、そりゃぁ登山しなくっても充
分でしょう。

残雪は明るい日射しに輝き、壁の随所に出来た氷壁がまた迫力ある景観を造りあげます。

この時期には八ヶ岳には雪がない、アイゼンが要らない、なんて思っている人も居るようですが、八ヶ岳だって主峰は3千にちょっと足らないだけ。GWでも雪はあるんです。それも今年は沢
山残っています。

都会に住んでいると解りにくいかもしれませんが、私達には麓から毎日目にする八ヶ岳。
これならバリエーションもいける。ってことで、赤岳主稜、日帰りに出掛けてみました。

今回のお客さんはフィットネスの先生、バリバリのキャリアウーマン?でもハッスルママでもあるアケミさんです。
もちろん体力は心配なし。サービス業のサガ?1日しかないGWを満喫しようと、やる気満々のスタートです。


文三郎尾根は出だしから急登です。疲れないよう一歩一歩足を運びます



赤岳主稜の核心部のひとつ、実はここが一番危険かも。の、取り付きまでのトラバース。
今シーズンは大きな事故があり、ここで重傷者が何人も出ています。

慎重に前爪を蹴りこみながらカニトラバース。あるはずのボルトが見あたらなかったしカムをセットして更にトラバース。
出だしはつま先がサックリ入った雪面も、陽が当たり始めたばかりの後半は、とても硬くなり緊張させられます。緊張はしてもゆっくりもできない。早く動かないと、沢筋では緩み始めた脆い
岩がパラパラと剥がれ落ちてきます。

この出だしも含め、全体的にルート上は雪は雨で硬くなっており、岩の箇所は脆くなっていてホールドが随所で動くため、支点は多めに、カム小さめ数個にダブルアックスだと安心できるで
しょう。
雪のしっかりついた厳冬期とは違った、デリケートな登攀が楽しめます。

  
先行者がいれば落石にかなりの注意が必要となる、暖かな1日でした。
まだ雪上では、今日がバリエーションデビューのアケミさん。
クライミングジムで練習しているだけあって登るスピードは普通なのに、厚い手袋での作業で遠目にもあたふたしている姿が見えています。でも大丈夫、何たって今日の赤岳主稜は貸し切
りです。暖かな春の日だから何の心配もありません。

やっぱり何事も体力です。慣れないことをやれば誰だって数倍疲れます。
疲れて下山がフラフラになるくらいの体力では無理があるけれど、体力だけは任せてって人なら後は根性でなんとかなるものです。

無事終了!長かったGWの晴天も、漸く雲行きが怪しくなってきました。

山頂で下山準備をしていると、今頃になって地蔵尾根から人が来ました。
アケミさんがその姿をみとめ、「随分軽装ですね」
「あぁ、展望荘からの往復なんでしょう」と、答えつつ、

よく見ると、その足下にビックリ仰天!これが皆「ナガグツ」なのだ。
これがまたよく、山小屋のスタッフの使う錨長靴、でも何でもない、ただのゴム長靴。

ここって此処・・・赤岳の頂上だったよな?改めて周囲の景観を確かめる。

もちろん赤岳の頂上だ。甲斐駒だって霞んではいるが、そこに見えている。

軽アイゼンを括り付けている人もいるが、付けていない人もいる。一体どうやって何処から登ってきたのだろうか?
そもそもどうやって降りるのだろうか?

頭の中は「?」マークで一杯だったが、そう何時までも山頂にいるわけにも行かない。
兎も角も下山に取りかかった。

文三郎から阿弥陀岳を望む

行者小屋に降りたら、大勢が一斉に赤岳を見上げているのに出くわした。
長野県警諏訪署員と、諏訪遭対のパトロール隊、それに小屋のスタッフ、天場の人。

理由は例の「長靴軍団」。
長靴軍団が小屋を通過したのに気づいた天望荘スタッフが、心配して連絡したのだ。
お陰で帰るに帰れなくなったパトロール隊、その場にいたみんなで、文三郎を下山する長靴軍団の一挙一動を見守っていた訳である。


当の本人達は、麓の視線を集めているとは知るよしもなく、呑気に休息しつつ動いている。
一体どうやってグズグズになって、下は硬い雪を「長靴で」降りてくるのか?謎である。

(ちなみに私は地蔵尾根の登りで、錨長だけ履いて登るうちに登り切れなくなり、かといって急斜面でアイゼンも付けられなくなって、稜線まで死ぬ気で強行軍した人物を知っている)

結局は樹林帯まで下山したのを見届けて一件落着?
やれやれと、みんな思い思いに下山しました。

果たして「長靴軍団」は、事の顛末を知ることがあるのであろうか?
下山テクニックも含めて、ぜひ訊いてみたいものである。

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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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