八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。


 山岳ガイド ミキヤツ登山教室の山行記録        

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 シャモ二周辺でアプロ−チも良く、比較的登りやすく、楽しい山を紹介します。
 ヨーロッパアルプス=モンブラン、マッターホルンという、お決まりのラインを外れてみれば、予想外に素敵な山行が出来ます。
 せっかくガイドを使うなら、なかなか行けないルートを、自分で行くなら頑張ってこれぐらいを目標にしましょう!
  

<グレードについて> 
F ・・・簡単
 日本のルートに例えれば、冬の硫黄岳とか天狗岳、春の穂高岳
PD ・・・クレバスのある氷河や、ちょっと難しいことがある モンブラン・ボス山稜(一般ルート)、アルジャンチエール一般ルート等
 日本のルートに例えれば、春の剱岳とか冬の赤岳、西穂高岳、冬の八ヶ岳の赤岳主稜や石尊稜
AD ・・・標準的 マッターホルン・ヘルンリ稜(一般ルート)
 日本のルートに例えれば、冬の中山尾根や阿弥陀岳北西稜
D ・・・難しい
 日本のルートに例えれば、鹿島槍ヶ岳北壁や錫杖岳3ルンゼなど
TD ・・・かなり難しい グランドジョラス北壁ランスール、など
 日本のルートに例えれば、
ED ・・・極めて難しい マッターホルン北壁、アイガー北壁、グランドジョラス北壁(ウォーカー稜)など
ABO ・・・この地でのトップクライミングとなる難しさ グランドジョラス北壁のバリエーションなど

・シャルドネ ミゴー(ノースバットレス) グレード・AD+ 小屋まで2時間。ルートの所要時間、下降も含めて8時間ぐらい。
 シャモ二からバスでツールの町へ。
 そこからケーブルに乗って、更にアプローチ2時間でアンベール1世小屋へ。
 翌早朝、4:00に小屋をスタート。ツール氷河を渡って、取り付きへは2時間ほど。状態によってはもっとかかることもあります。
 ルートは雪壁から始まり、雪稜、そして岩と氷のミックスを2〜3ピッチ登ると再び雪稜となり、それが雪壁に変わります。ラッセルをひたすら頑張るとシャルドネの頂上です。ルートの標高
差600b、小屋からは1000b。ちょうど八ヶ岳のバリエーションルートを美濃戸からスタートするようなものです。
 ヨーロッパのミックスルート全体に言えることですが、残置支点はほとんどありません。確か全くなかったと記憶しています。でもカムやナッツなどはフルに使えるし、アイススクリューも有
効です。
 下降は一般ルートを降りますが、阿弥陀岳の北稜ぐらいの難しさです。途中で40bほどの懸垂下降がありますが、ロープが引っ掛かりやすいので注意が必要です。
 ガイドブック曰わく、「驚くべき事に、多くのクライマーがアルプス全体の中で最も面白いルートだと言っている」そうです。
 確かに、さしたる深刻さ無しに楽しめる、面白いルートです。

・アルジャンチエール針峰 一般ルート グレードF+ 小屋まで2時間。ルートの所要時間、下降も含めて6時間ぐらい。 
 シャモ二からグランモンテスキー場へ。そこからケーブルでグランモンテへ上がり、アルジャンチエール氷河へ下降し、2時間でアルジャンチエール小屋です。
 ここの氷河は日本人には馴染みが薄いが絶対のお勧め。
 アルジャンチエール針峰は小屋のすぐ脇の氷河を登り続ける事、4時間ほどで山頂です。
 



クルト北壁 スイスルート

 2001年7月5日
加藤美樹 久野弘龍

 アルジャンチエール小屋から見るクルト北壁は、岩が多く出ていて、オーストリアルートはダメだがスイスルートはなんとか登れそうだ。
 明るいうちにルートをよく見ておく。特にシュルンドを越える場所。真中が繋がっているようだが、あれはそう見えるだけだろう。右はどうだ。つながっているが、ルートは壁の真中であり、そ
こまでトラバースするとなると岩の部分もあるし、少し下降気味になるので大変そうだ。左の方から越えることにする。200m近くのトラバースになるがこれが一番確実だ。
 あとはコンテで頂上まで駆け抜けるだけだ。そう決めてから眠りに着いた。

 実は今回の前にクルトは3回も敗退していた。ルートはすべてオーストリアルートで、ヨーロッパに来て最初の一本にして、それから大きなルートに行こうと考えていた。しかしどれも敗退に
終ってしまった。詳細は以下のとおり。

 1回目
 まだアプローチにケーブルが動いておらず、小屋まで標高差1500メートル以上を、氷河に入ってからは脛程度まで潜りながら行ったが、それで疲れてしまって一日休養を入れたら天候が
悪化してしまい冬季小屋に閉じ込められてしまった。2日後に小屋から逃げ出すが、氷河でガスに巻かれてしまいクレバスに怯えながらの下山となった。全くのホワイトアウトで位置も方向
も解らず、しかも新雪でクレバスも隠されている。今のような早い時期はまだクレバスもあまり出ていないかわりに、小さいため解らなかったり、雪が降ればすぐに隠れてしまってかなり怖
い。

 実は二年前にもヴァレーブランシュで完全にガスに巻かれてツールロンドの北壁からミディ南壁の下のテントに帰るのに4時間以上かかり、揚句に雪盲になって完全に行動不能に陥り救
助されたことがあった。その悪夢がよみがえったが、なんとか下山。

 2回目
 今回は点検用の中間駅までゴンドラに乗って楽々アプローチ(しかも無料)。しかし、小屋で久野が熱を出して一日休養を入れたら天候が悪化して、またもや小屋に閉じ込められて敗退。
帰りもガスに巻かれたが、流石に2度目は余裕の下山となった。
 3回目
 スネルスポーツの神田さんには「おまえ等どうせ行ってもまた敗退だろ。辞めとけ。どうせ雪が多すぎて登れねーよ」といわれるが、絶対に登ってくる決意で向った。とにかく一本登らなけ
れば始まらない。
 天気はドピーカン。最高の天気。気温も低い。でも前々日までの3日間の荒天で積雪1メートル以上!小屋までのアプローチで膝までのラッセル。
 アルジャンチエール氷河は僕ら以外誰もいないしトレースも無い。雪も真っ白。こんなに綺麗なこの氷河は見たこと無かった。壁は白く光って、壮絶な美しさだった。
 でも、壁までは腰まで沈んで通常1時間の所が4時間!シュルンドを越えようにも雪が柔らかすぎてルートも危険なので敗退。2日ぐらいの晴天では雪は落ちない。解ってはいたがやっぱ
りダメだった。
 食料がなくなって下山したがクルトは壁全体が雪崩れていた。行かなくて正解だった。

 登れたのは7月5日。グランドジョラスのランスールをアイゼンを忘れて敗退して帰ってきた後だった。
 0時30分。小屋を出る。雪は締まっていて歩きやすく、あっという間に壁の下に着いた。小屋のほうを見ると四つの明かり、二つのパーティがクルトに向かってくる。
 登攀具をつけて登りだす。予定では左端からシュルンドを越える予定だったが、近くで見ると正面が繋がっているようだ。これが行ければかなり楽になる。
 しかし近づくと繋がってはいるが越えられない。スノーブリッジが微かに架かっていて、恐る恐る乗るが、その先は高さ5メートル位の雪壁がかぶっていて、高温のためその雪がやわらか
い。切り崩して上がろうとするが、下を見ればシュルンドの奥は真っ暗で、下が見えない。確保してもらってはいるが、落ちればたぶん左側に、左側は、シュルンドが崩れていて、その縁は
10メートル以上は下にあるから、落ちる距離は・・・。怪我したくないから諦める。
 いつも後悔する。最初に決めたとおりに左から行けばいいんだ。何度も観察して決めたことだったのに目の前により楽できそう事があるとそちらに流れてしまう。易きに流れっぱなしの自分
が嫌になる。
 シュルンドに沿って左へ200メートルほど下降する。やはりこちらはしっかりと繋がっていて歩いて渡れた。貴重な時間をかなり使ってしまった。
 シュルンドを渡ったのが3時30分頃。そこから少しずつ登りながらトラバースしてルートに入る。しばらく60〜70度ほどの氷雪壁を登る。ここまで加藤がトップになってコンテで進む。
 トップを久野に変わって、ルートの核心部である氷壁を登りだす。氷壁は幅1メートル〜2メートルぐらい。核心部といっても傾斜は70〜75度、部分的にもう少しきつい程度なので予定通りコ
ンテで突っ込む。
しかし、これが大きな間違いだったことがすぐにわかった。
 傾斜が増してくると、氷はシャーベットのようになって、中で水が流れている。ピックは岩にあたり、アイゼンの前爪も岩に当たることがある。出来るだけ厚みのあるところを登ろうとするがそ
れでもピックが氷を切ってしまう。仕方が無いのでダガーポジションで、氷を押さえ込むようにして登る。傾斜は70度ほどで、この先でもう少し傾斜がきつくなっている。同時登攀のつもりだっ
たのでロープ間隔は短めにしていた。これを解かないといけない。傾斜がきつくなる前にスタカットにしたい。
 微妙なバランスで立ちながら、片手でロープを解いていく。刺したバイルは役に立っていない。スタンスは、氷がグサグサなので前爪だけで立っているわけでないが、何時崩れるかわから
ないぐらいボロボロだ。
 スクリューで支点を取りたいので試しにねじってみたら、回すまでも無く岩に当たってしまった。スクリューの溝が見えているぐらいにしか入らない。そんなことで微妙に立ったままでの作業
となった。
 早く解きたいときほどそう上手くはいかないもので、ほどいたロープが重みになって、体にかけてあるロープの束がどんどん締まっていく。僕はバカだったので何を思ったか、腕を抜いて、
首にかかっている状態でそれを行った為に、首が締まって苦しい。
 これはヤバイ。このままでは下手をすれば「生と死の分起点」に載ってしまう。
ここで落ちれば、その改訂版に間違いなく載るだろう。そんな不名誉をこうむるわけにはいかないとばかりになんとかロープを解きにかかる。絡まらないように一本ずつ静かに解く。
 なんとかロープを解いて再び登りだす。氷がよければ駆け抜けれるところを慎重に登っていく。依然として氷はグサグサで薄い。支点はさっきのグラグラの一本だけだ。そんな抜けると解っ
ているものでも、取れるとずいぶん楽になる。
 ルートは前日までに結構入っていたようで、それでかなり脆くなっていた。ステップが残っていたりすることもあるが、そこから氷が溶けたりしてグサグサだ。あまり役にはたたない。それよ
りも氷がボロボロ落ちる。
 ロープを一杯に伸ばして氷質の良くなった所でビレー。加藤がフォローしてくるが、ここで後続のパーティもあがって来た。同じところで並んでビレーした。
 彼等は親子で登っていて、親父は下手だが息子は上手い。
 息子の方に「ごめんよ、僕はアイスデストロイヤーなんだ」と誤る。
 2ピッチ目は加藤がリードするが特に問題はない氷雪壁で、良い状態だった。
 3ピッチ目は久野リードで再び傾斜が強くなる。傾斜が強い所は氷が出ていて、またもやグサグサ。とっても怖い。支点は横の岩に残置があって1本だけ取れた。他はスクリューの入れら
れる所はなかった。ここも氷質の良くなった所でビレー。この辺りで日が差し始める。クルトは北壁というものの、朝日が直撃する。予定では暗いうちに半分以上は行きたかったが全然ダメ
だ。焦ってくる。
 加藤がフォローしてきてそのまま4ピッチ目に入る。そこでちょっとしたアクシデントが起きた。久野がビレーしていて、余っていたロープを下に垂らしすぎていてそれが氷の出っ張りに引っか
かってしまった。バカなミスだが、どうしようもない。幸い氷質は良くなっていたのでピッチを切ってもらいロープを固定してもらって直しに行った。これでかなり遅れてしまった。後続のパーティ
にもここで抜かれてしまい、また彼等は60メートルのロープを使っていて、僕等より5メートル長い。これがその後大きく影響してかなり遅れてしまった。
 5ピッチ目以降は60度ほどの氷雪壁で、しばらくはコンテで楽に登れた。
 200メートルほど登ると再び氷壁が出てくる。傾斜は70度ほどだが、ほとんどトラバースするように左上せねばならず、ここで再びスタカットにする。
 先行パーティはこれを60メートルと、残りはコンテで抜けたが、僕らは55メートルでは次のピッチでコンテで抜ける所までは達することができずに2ピッチをスタカットで行かなければならな
かった。ほんの5メートルの差と、ちょっとした腕の違いで30分以上はロスすることとなった。大きな氷雪のルートだというのにこんなに時間のロスをしていてはあきらかな失敗だ。
 ここを過ぎると後はたった400メートルほどの氷雪壁のはずだった。コンディションしだいでは快適な雪壁のはずだった。しかしこの9時を過ぎた時間帯ではそんなに簡単な仕事にはならな
かった。
 ルートは最後までコンディションは良くなかった。硬い氷の上に腐った雪が、丁度ピックが届くか届かないかの厚さでのっている。ダガーポジションで雪を抑えながら登るには不安定すぎ
る。バイルはピックがチョットしか刺さらない。アイゼンも前爪を刺せば楽だが、そんなに長い間続けられないので、できるだけフラットに置いて騙しながら登っていく。そうしなければコンテで
登りきれない。
 これまでの疲労と、水、食料の補給をすっかり忘れていた為にかなり消耗してしまっていたので、コンテも安全の為に支点を取りながら登っていった。
 頂上についたのはなんと12時ちかく。予定ではコンテで抜けられれば7時、スタカットを混ぜたとしても最悪9時には頂上に着こうと考えていたのにだ。
 クルトはなんとしても登りたかった。クライミングを始めた時はこんなとこ登れるとさえ思わなかった。登り方は納得のいくものではなかったが、でもやっぱり頂上では感激した。初めてだっ
た。
 下降は一般ルートを、腐った雪と雪崩に注意しながらタレーフル氷河目指して降りる。
 一般ルートといえどもグレードはPDあり、僕の感覚では鹿島槍北壁の正面ルンゼとかがPD+に感じるから、結構注意が必要だ
とおもう。下部ではドロワットからの雪崩が凄い。昼に下降するときは結構注意がいる。僕等も最初は雷かと思ったぐらいの音だ。
 そのままクーベルクル小屋に泊り、翌日モンタンベール経由でシャモニに下山。
 後日聞いた話によれば、前日に登ったパーティもコンディションが悪かったのか12時ごろまでかかった様だった。
 クルト北壁スイスルートはいいルートです。
 夏でも早ければチャンスはつかみやすいので、モンブランに登りに来る方、グランドジョラスに登りに来る人、ただそれだけで帰らずにちょっとバイルを2本もってアルジャンチエール小屋に
行ってみてください。
 日本で登るルートの延長でない、アルプスの登攀が楽しめますよ。
 絶対面白い。カッコイイし!

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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています