八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。

 2003年 5月  山スキー 雨飾山        

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2003年 5月1日
メンバー リーダー・加藤 サブリーダー・久野 食当?シエスタ

 その名の響きを、深田久弥に絶賛された「あまかざり山」。私は幾度と無くこの不思議な名を持つ山を訪れて来た。山スキーで雪ばかりを追っかけていた20代の頃、「当時は」、と言うと
昔のようだが、ほんの最近までこの姫川流域は遠かった。白馬まででも仁科三湖の辺りは道が狭くて、よくスキー渋滞したのに、雨飾山のある頸城は更にその奥。だから大好きなこの山も
単独では来られずに、蓮華温泉のツアーと併せて滑っていたので、実のところ私の知っているこの山は残雪期のみ。夏期の姿は知らな
い。
 久しぶりにこの松本〜日本海(糸魚川)を通った人なら誰もが驚くと思うけれど、大型車とのすれ違いが恐ろしいほどの崖っぷちか、はたまた狭いトンネルばかりだった国道は今は新しいト
ンネルで快適に抜けられるのだからビックリだ。
 いくら豪雪の頸城山塊とはいえ、通常なら4月で残雪期は終わってしまう1900mそこそこの低山に流石にGWで雪があるのかしら??とおっかなびっくりで白馬から増水した姫川本流を
横目に下っていく。世は春爛漫の里の風景。雪が無ければ板は無用の長物になるのみ。小谷温泉に来てみてもまだ滑れるか疑いを持って眺めていた斜面に、雨飾温泉まで来て漸く安心
出来る積雪を見いだせた。
 しかも4月は大体が下の小谷温泉から長い林道を歩くのに、また、除雪してある時でも雨飾荘までなのが夏の登山口の鎌池まで車で入れてしまった。やった!これなら美味しいトコ取り
だ。
 流石に山スキーヤーで賑わうこの山も、板を降ろすのは私達しかいない静かなGWナカ日。空は快晴、雪はまだ3m以上もある。いざ出発!ってとこでいきなりシエスタ君がキバリだした。
うんこの片付けからのスタート・・・でがっくりの私達を横目に「でもキョウはこれでウンがツくれしょ?」とシエスタだけが大張り切りだ。ブツは袋に入れて厳重に縛り、雪の中へ隠し、帰路持
ち帰りである。
 <出合付近>
 雪が割れて谷に回り込めないので、夏道と同じダイレクト尾根に取付いた。でもやっぱりここは急すぎてシール登高(板の裏に滑らない皮、シールを付けてその板を履いて歩く)
は辛すぎる。あっさり観念して板は担いだ。雪の下にはしっかりした木道の夏道が覗いている。これなら無雪期であってもこの山は快適に登れるだろう。
 今回私は160cmの板で久野はフリートレック。滑った時の安定感はやはり本格的なスキー板だが、こうやって担ぐ時は勿論フリートレックが断然軽い。途中、本日唯一会った単独のテレ
マーカーとすれ違った。彼は私達が諦めた割れた川のトラバースをして奥の谷から登ったようで、トレースがないのに突然現れて私達を驚かせた。
 道具もスピードも違うので離れて歩く私達の間を、シエスタときたら大はしゃぎで行ったり来たり。それも左右で無くって上下に・・・50b離れても100b離れても。
 
「ウホウホ!にいちゃん、たのしいねえ。ねえたん、ハヤクきなよ!ヨ〜シおいらがねえたんをムカエニいってやらぁ」・・・・あのねシエスタ、来なくってもいいって・・・。
 こんな事をひたすらに急斜面で繰り返せば、お決まりのバテバテシエスタに。
 さあ、正面の丘を越えれば頂上岩峰だ。という頃には「にいたん、もうサ、やめよ〜よ。ねえたん、ネエまだ行くの?」と、やたら休憩が増えてきた。
 「ウワ〜ィッすずしそうなアナらぁ」と大きく割れて笹藪の覗くクレバスに頭を突っ込むシエスタに大慌ての私達。「きゃー辞めて!シエスタ落ちちゃうって!!」
 そう、春山の危険というとそこかしこに大きく口を開けたクレバス。それも表面だけでは解らない場所にも潜んでいるから油断大敵だ。割れ目に気づいたら、その延長線上にもかならずクレ
バスが隠れていること、と思って行動しよう。先日の春スキーの事故でもその人は注意深く板を外して割れ目を避けようとしたのに、5mばかり落ちたその場所に岩が出ていて頭部を打ちつ
けて亡くなってしまったという。このように通常は死亡には至るとは思えない事故だってあるのだから、私達も何気なく行動してしまわない
ようにしましょう。救急車が来られるわけでもない山の中なのです。危険な場所は実際自分がそこに落ちたらどうなるかを想定して通過するなど、自分の身は自分で守るしかないのです。
 視界は開け、周囲一杯には白馬や天狗原、五竜や鹿島、戸隠や高妻乙妻も間近にそびえる大パノラマ。で、もって顔の前には不動の「シエスタのお尻」。
 これがまた、コヤツがワザと行く手を阻むのだ。それも人がせっせとキックステップを切っている、その目の前に目の前にと回り込んでは動かなくなる。それを無視、よけては更に登ってい
く私達の背に、シエスタの悲しみの視線が注がれるのだが、そんなこと気にしてたら山頂には着かないヮ!


 
 頂上岩峰までは雪稜とボロボロの壁だったので、スキーの兼用靴ではパスして早速、滑降準備に移る。
 滑り初めは細い尾根で、慎重に滑り出す。しかし、傾斜は緩いので、シエスタも「僕について来な」というように先行してゆく。しかし、すぐに広い尾根に入り、犬には辛いと思われる、スキ
ーの領域だ。
  
 広々とした残雪の尾根に思う様ターンを決めるのは最高だ。いつの間にか上達した久野も、あっと言う間に板を駆ってすっ飛んで下っていく。
 後に残されたのはシエスタ1匹。スキーには絶好の緩んだザラメ雪は、下りようとするシエスタと一緒にずれて滑る。だからシエスタはビビリまくり。でも流石は山岳救助犬のタマゴ!直ぐ
にコツを掴んで左右にジグザグに走っての下降を開始した。「ねえ!にいたん。ボクじょうずレショ?へへ〜ん、板なんて無くたって、見て!うまいっしょ?」
 
 雪原はブナの原生林に変わり、その林間を縫って二人と一匹、雪解けで割れた雪面を避けながら尾根通しで下降した。同じく百名山の荒島岳もそうだが、日本海側のブナ林はやっぱり
凄い。このブナの原生林ならばきっと新緑や黄葉の頃も素晴らしいことだろう。
 <中間部、ブナ林の滑りは快適そのもの>

 夏は自然園の湿原も今は深い雪壁の下。水が飲みたいシエスタには届かない位の積雪の量だが、それでも水芭蕉が芽吹き、来た時には無かった亀裂がまた新しく走っていた。雪は多
くともやっぱり春らしい陽気だ。
 ラストの締めはやっぱり温泉。下の小谷温泉も時代を感じさせる鄙びた宿が建っているが、その日登った山を仰ぎ見るには、ブナの新緑に囲まれた雨飾温泉の露天がいい。
 「やっぱり春は雨飾山に限るな!」最近スキーともご無沙汰で、久々に訪れたかったこの山との邂逅は心躍る楽しさであり、今回初めての山であった久野もことのほか気に入ってくれたこ
とも嬉しい限り。常念、鹿島に続く山デビューでは今回が初登頂を果たしたシエスタ君もご満悦?いやいやどうせ、「チョウジョウ?それ、たべられるノカナ?」って位のもんだろーけれど。
 チョッピリ遠い小さな山だけど白馬方面からは見目美しい形で、更に変化に富んだ山旅が出来る。それが雨飾山。よ〜し、来年も行くぞー。

2004年は3月にでも合宿形式で登りまくり、滑りまくりでもしようか。

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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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