八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
ドロミテクライミング2019 vol1 ミキヤツ登山教室/国際山岳ガイド
クライミングパーティ1 1日目〜4日目
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2019年 ドロミテクライミングパーティ ・・・ドロミテクライミング教室となりました。
2019シーズンはクライミング目的で二組の方が来られました。
1組目は別々で来られたお二人の参加です。
お一人はドロミテも既に3回目。
チマグランデ(ドライチネ)の北東壁を狙ってのおこしです。
しかし3回目とは言っても普段はほとんどクライミングはされていなかった(*_*;…そうです。
もう一人の方は、アイガー/マッターホルン/モンブランと、ヨーロッパの人気3山を登った経験はありますが、クライミングは殆んど初めて(@_@)…だそうです。
そんな訳で、今回はドロミテ・マルチピッチクライミング教室となりました…。
日程は以下の通り。
ほぼ全日クライミング、もしくはビアフェラータという、3食、クライミング漬けツアーです。
7月15日 ベネチア到着〜カンピテッロ・ディ・ファッサ(Campitello di Fassa)のアパートへ移動
7月16日〜22日(7日間)クライミング&ビアフェラータ
7月23日 ベネチア空港で解散
1日目(7/16)Citta dei sassi(シタデイサッシ) ショートルート
2日目(7/17)Sella tower 1st/2nd(セラタワー1峰〜2峰縦走)
3日目(7/18)ビアフェラータ フェダイア
4日目(7/19)Sass Pordoi(ポルドイ) Via Maria(マリアカンテ)
5日目(7/20)Punta delle Cinque Dita (ファイブフィンガー) 親指ピーク〜本峰
6日目(7/21)Sass de Storia(サッソ・ストーリア) クラシックルート
7日目(7/22)Tre Cime di Lavaredo(チマグランデ) ディボナ18ピッチ・W+・600m
1日目 ドロミテクライミングスクール? Citta dei sassi(シタデイサッシ)ショートルート
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ドロミテ1日目。
景気よく快適なマルチピッチルートに行きたいところですが、今回はまずはクライミング講習会から。
日本が天候不順なため、クライミングの練習がしっかりとできていなかったFさん。
ドロミテがここまでクライミング要素が高いことを「思ってもいなかった」Oさん。
今回の目標がチマグランデにあるので、ショートルートでの練習からスタートです。
Citta dei sassi(シタデイサッシ)という岩場は、セラ峠(Passo Sella)にあるボルダー群。
つまりおっきな石ころです。
ボルダーといっても長いルートは25メートルはあるので、日本にあってもかなりの人気エリアになるはず。
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10以上のエリアがあり、ボルダーであることで、天気や風向き合わせて登る面を選ぶ事ができます。
アプローチは5分〜20分程度。
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グレードも5.5〜5.13まであるので、天候が不安定な時や体が疲れている時のレストに最適です。
勿論景色は最高。下地最高。
シーズンになれば至る所にエーデルワイスが咲いています。
今日は5.8程度のルートから始めて5.10bぐらいまで登りました。
この様な環境なので、クライミングに自信がなくともドロミテではクライミングを始められます。
練習しながら、マルチピッチを楽しむことができるウェルカムな処がドロミテの良さです。
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2日目 ドロミテ西部のトレチメへ Sella tower 1st/2nd(セラタワー1峰〜2峰縦走)
Oさん、人生初めてのマルチピッチクライミングはドロミテで、そして「Sella Tower」です。
ルートは1stセラタワーから2ndセラタワーへ縦走します。しかし縦走と言っても歩くわけではなく、1stセラタワー6ピッチのクライミングで頂上に立った後、そのまま2ndセラタワーを3ピッチ登ってその頂上を目指します。
ちなみに、「トレチメ/Tre cime」とは3本の塔という意味です。
(セラタワーは実際には4本あり、左端が4番目の塔です)
右の岩峰から真ん中の岩峰へ、赤い点線を辿って登ります。
ルート名は1stセラタワーがStiger、2ndセラタワーがGluckです。
グレードはW+(5.8ぐらい)ですが、核心部はもう少し難しく感じます。
ドロミテでも随一の観光スポット付近にあるので、景色は最高!
まるでガイドブックの表紙になりそうです。
バックはサッソルンゴ山塊。真ん中の岩峰がファイブフィンガー。右がサッソルンゴ。左がグローマンピークです。
どれも登れますが、アプローチと下山を考えると真ん中がお勧め。
これは5日目に登りました。
右のサッソルンゴもおすすめですが、ルートの面白さではやはりファイブフィンガーです。
影をみると、セラタワー三つのピークがよく分かります。
概ね傾斜が緩いルートですが部分的に傾斜が強くなり、ジャミングが出来ると楽しめます。
岩は硬く、グイグイ登れる岩稜ルートなので、高度感がかなりあります。
Fさん、昨日が初めてのクライミング。
そして今日が初めてのマルチピッチルート。
2ndセラタワーに到着です。
この後の下降がこのピークの核心ですが、それはまだ彼は知らないのでした…。
本人曰く「アイガーより怖かった」そうです。
アプローチと下山はドロミテのどこのルートへ行っても、フラワートレッキングが付いてきます。
この時期7月は夏の花ですが、6月は初夏の花(アネモネなど)、7月下旬から8月は秋の花(リンドウなど)へと変わっていきます。
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3日目 第一次世界大戦の遺構を巡るヴィアフェラータ Via delle Trincee/La Mesola
ドロミテでの遊びは、およそアウトドアで考えられるほとんどを、しかも高いレベルで楽しむことができます。
冬はスキー(ツアー・ゲレンデ・フリーライド)、夏はロードバイク、マウンテンバイク、トレッキング、ロードランニング、トレイルランニング、そしてもちろんクライミング。
登山をたのしむなら、トレッキングの延長やクライミングの一部として楽しめますが、ドロミテではビアフェラータを駆使した登山がお勧めです。
「日本の鎖場のような」と表現されますが、それは間違いです。
日本の鎖場よりも遥かに険しい場所にワイヤーを張り、専用の装備を使うことで、より安全な方法で困難に対処しながらピークを目指したり、縦走を楽しむことができます。
実はドロミテではクライミングよりも遥かに人気があります。
そんな訳で今回のお二人、今シーズン以降もドロミテを楽しむのであれば知っておいた方が良いのでビアフェラータにも挑戦です。
しかし実際は、この日は昼過ぎから天気が崩れそうなので何処からでも逃げられるルート、行動を選んだというのが正しいところです。
ドロミテは、シャモニ、ツェルマット、グリンデルワルトなどの山岳リゾートよりもロープウェイや登山列車に頼る事が少なく、エリアが広大(東京都ぐらいの広さ)なため、天気、体調に合わせて行動しやすいのが特徴です。
今回のルート、「Via delle Trincee/La Mesola」というのですが、僕らは「マルモラーダ対岸ルート」と勝手に言っています。
バックにあるのが、ドロミテ最高峰(らしいです)のマルモラーダ。その対岸を縦走するのです。
ドロミテでは天気が良い日でも、夕方16時以降は雨が降る事が普通にあります。
昨夜も雨が降っていましたが、稜線は雹がかなり降ったようです。
ルートはスタートから核心です。
垂直ではなく、若干のオーバーハングです。
この出だしがいきなりチェックポイントで、後続の家族は登れなかったため、引き返したようです。
今回は体力的(筋力的)に、ココを越えられたので通常の装備で登っていただいていますが、必要であればロープで確保します。
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常にマルモラーダを観ながらの行動が続きます。
このルート、ビアフェラータとしても楽しめるルートです
が、この景色は他ではなかなかありません。
ドロミテはヨーロッパの他の山域と同様に氷河がどんどん
後退して、今ではマルモラーダが唯一の氷河といわれて
います。
実際、僕らがドロミテに初めて来たのが2005年。それ以
降、時々来ていましたが、通うようになったのは2009年か
ら。
当時はそれほど気にしていませんでしたが、ここ5年間は
目に見えて毎年氷河が後退しています。
この分だと、あと10年もしたら氷河は殆んどなくなてしま
うのではないかと心配です。
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基本的には稜線縦走となるので、マルモラーダが見えたり、見えなくなる側をトラバースしたりしながら進みます。
専用の道具を使って安全を確保しての行動ですが、なかなかスリリングです。
岩を登らずワイヤーを使って登ると思われがちですが、場所によってはワイヤーから手を離さないといけない場所や、逆にワイヤーに頼らなくてはならない場所もあります。
少なくとも、「ワイヤー使って登るから簡単」という事はなく、ある程度筋力、クライミング経験があった方が有利です。
ワイヤーと装備を信頼して、慣れてくればこんなポーズができるようになってきます。
Fさん、右側の様な岩峰を見ると、職業柄?観音様に見えるそうです。
思わず手を合わせてしまいます。
ルートは第一次世界大戦の遺構を辿るようになります。
もともとヴィアフェラータはドロミテが戦場になった第一次世界大戦時、岩山を要塞化したことから始まります。
軍隊の移動を安全かつ、迅速に行うためにワイヤーが張り巡らされました。
これがヴィアフェラータの始まりで、それを補強したり、修繕することで登山に使うようになりました。
今では登山目的のヴィアフェラータが数多くあります。
縦走なので、当然岩稜の下降も出て来ます。
ココでもヴィアフェラータの装備は大活躍です。
簡単な処はワイヤーが無いのですが、それでも慎重な行動が必要です。
予報通り、昼過ぎになると天気が怪しくなってきました。
ドロミテでは天気に合わせて行動することが多くなります。
ルートが多くあること、ロープウェイなど乗り物に頼らなくても良いことが多いことなどから、出発時間を調整しやすく、仮に半日しか行動できなくても十分遊ぶ事ができます。
・・・いや、むしろ半日で行動を終えたほうが、連日楽しむことができます!
ドロミテツアー2019年・クライミングコース1パーティ目 4日目以降へ続く
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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています
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