八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
2010年10月7日 そもそもが職業ガイドだなんて言っても、案外仕事以外での山歩きなんぞはしないものでして・・・ ヨーロッパやアンデスでの登攀は、現地まで行ったら最後?ほぼ強制的なので・・・登っちゃったりもします。 (私、こんなトコで何してるんだろう?とか、思わないわけでもないけれど) 後は気が向けば、たまに裏山(八ヶ岳)の小屋まで、友人訪ねて行ったりするくらいのもの。増してテントなんか担ぎません(←私だけ?) ところが!珍しくイソイソと幕営具を詰め込み、ノコノコと家を出てきたのには色々訳がありまして、晩秋の朝、早起きには弱い癖に、頑張って車を走らせました。(5時じゃ〜余り頑張っち ゃいないか?) お?また表情が少し変わりましたね「朝日岳」 久しぶりの一人歩きにウキウキしながら、けれどテント山行も久々で、肩に食い込むオモリを担ぎつつ、スタートした蓮華温泉。入山前の平岩で燃料系を見て慌ててスタンドに引き返して みたり、ロングドライブに疲れたりで、4時間近く掛かって漸く着いた登山口。 この蓮華温泉ロッジは、昔から山スキーの時期だけなら毎年のように滑り込んでいた。ただし無雪期となると別で、瀬戸川の谷の奥遙か遠くに対面して緩やかな稜線を描く山が、にわか には朝日岳だとは信じられない。(と、言うか、信じたくはない) 地図を眺めては、「あれが鉢ヶ岳で、雪倉、朝日・・・だよねぇ」 と、左から順番に、幾度か数えては溜息をついて繰り返す。(いくら数えたって、順番が変わるわけでもないけれど) しかし、と、遠い・・・ 汗にまみれて「カモシカ坂」を登り切ると・・・ スタートは既に10時近かったので、「このコースは距離が長く健脚向・上りは蓮華温泉を早立ちすること」(休憩を含め9〜10時間見ておく) と・・・「山と高原社」地図に表示されてることもあって、温泉ロッジ前はコソコソと人目を避けて通過する。 (↑クレグレも、よい子の登山者の皆さんは真似しないこと!) それにしても・・・日本海側山域の、その湿気の凄まじいことと言ったら、ハンパじゃありません。内陸の高原に住む私には堪えます。 荷物は普段もザイルやギアを運ぶし、国際氷河研修から帰ってこのかた、北岳バットレスに毎週のように通っていたので(この直後に崩壊しましたが)酷く重いとは感じない。それに水を 含まなければ10`程度のザックである。 が、しか〜っし!荷物があると汗も余計に噴き出す訳で・・谷に下りては登り返すのを、ひたすらに標高の低い場所で繰り返すこのルート。 流石に暑い!!流れる汗で視界も妨げられるくらいに、暑い! 「く、苦行だよ、コレ」でもなぁ、トレーニングも兼ねてるしな・・・ そんな苦行も、花園三角点で終わりを告げた だって、「八ヶ岳の紅葉」は、こんな三原色ではありません そしてナナカマドの赤ばかりが中心となる、「涸沢の紅葉」とも違います 豊かな水分と、寒暖差の激しさがあるからこそ、艶やかで瑞々しい紅葉に彩られる、日本海側の山 潤いで一杯の日本の山って、緑も紅葉も、酸素まで濃くって、やっぱりイイよなぁ♪ (↑花園三角点より下のアップダウンは、既にスッカリ忘れている) 深い山霧に包まれ、たっぷりの水を得た「五輪の森」の木立 森の木々が喜びに枝を振るわせ、露を落とす 透き通る様な色の変化を魅せる「オオカメノキ」 ついつい嬉しくて、角度を変えてみては、色のコントラストの違いを楽しむ 「ホラ、振り返っただけでも、違って見えます」 「五輪の森」を抜けた足下の斜面にも、色彩が渦を巻いています もっと紅くなった「オオカメノキ」 頭上に広がった斜面 霧が晴れた谷底の奥だって 深い霧は、遠近感も際立たせます もともとリンドウの種の中でも開きが悪い「オヤマリンドウ」だから、この天気じゃ、つぼみも固い 何処までも紅葉が続く道 「朝日岳」が大きな姿を現す 草紅葉もいいゾ! 足下にも、渇水期の晩秋だとは思えないほどの、水の流れがあります 「チングルマ」の紅も見事 初めて先を行く登山者を発見 池糖 翼を広げて飛ぶ、野鳥の眺める視点みたいです 「五輪山」 「朝日池」より上の稜線で会った、親子の雷鳥達(彼女らには、次の夏にも会えました) 栂海新道との分岐で、先行パーティーを追い抜いてから雷鳥に出会う。 あまりの色彩の素晴らしさに独りで昂揚し、周囲の紅葉を撮りまくっていたら、すっかり遅くなってしまった。 「チングルマ」の綿毛 山小屋の受け付けに入ったら、傍らには雪崩で行方不明のままダウラギリから戻らない、昔の山岳会仲間である季生への「捜索資金の募金箱」があった。「この募金は、家族の方に直接 お渡しさせていただきます」との但し書きも添えてある。 春に劔沢で会った「阿曽原温泉小屋」の泉さんから、「あいつもホレやっと可愛い嫁さんと籍入れたけぇ、腰を落ち着けたもんだっちゃ」などと、伝え聞いてはいたけれど。 テントを運んだ分浮いた山小屋代替わりのお札を、せめてもと小屋主の清水ゆかりさんに手渡す。 独り生き残ったSさんとも、先年ドロミテで二人して登ったばかりであり、このダウラギリで二重遭難の危険を冒しながら捜索に当たる人達には様々な縁がある。現地に発った友達には、 出国前既にカンパを渡しに訪ねたけれど、この黒部の小屋の方々にも、彼が公私共にどれだけお世話になっていたことか、時折山で顔を合わせるに過ぎなかった私には計り知れない。 けれど、富山人の素朴で暖かな気質に、ここで彼がどれだけ愛されていたのかは、ブログからでさえ十分に伝わってきた。 人情熱いゆかりさんを始め、黒部の山小屋を預かる人々を頼って、小さな麓の里に移り住み、若い夫婦での生活の基盤を築きつつあった彼。時折山で遇えば「いつまで経っても放浪癖の 抜けない奴だな」と思っていた彼が、何故この土地に落ち着いたのかが、何となく解った気がする。 蓮華温泉9:50〜朝日岳16:00〜朝日小屋16:30 2010年10月8日 小屋のスタッフの皆さんと一緒に、ラジオ体操! 気が付いたら、周囲に張ってあったはずのテントの人達は、もう誰も居なかった? 朝陽を受けて輝く「チングルマ」の綿毛 朝日平を振り返って眺める「朝日小屋」バックには真っ青な日本海! 山頂からガンガン下ってまた登り返すけれども、そんなこと差し引いたって、この抜群のロケーションと人情の温かさは、大きな魅力。 何処から来たって遠いにもかかわらず、常連さんが多いのも頷けます。(宿泊者は多くないけれど) 「みんなで体操したらお茶にするでね、ゆっくりして行きなされたらええよ」「その足やったら、いつ出なされても温泉くらい着くっちゃね」 「ではでは、いただきます」ナンテ、のんびりお茶してお話しして、で、小屋を出たのは10時くらい? 「またお花見に来ますね〜!今度は小屋泊まりでご飯いただきに来ます♪」とお別れした。 初夏も楽しみな「チングルマ」の群落 やっぱり日差しは少ないけれど、霧の晴れた「五輪山」 昨日より陰影のハッキリした「五輪の森」右奥に小さくポツンと見えてる裸地、実は蓮華温泉なんですね「遠っ!!」 次は尾根を越えて雪倉岳にも行ってみたい モチロン軽装で 日の光を受けた斜面と、遮られた斜面・・・このスポットライトの様な色の移り変わりも、「朝日岳」を、自然の中の大きな劇場に変えてくれる 谷の奥の奥まで紅葉だ〜 昨日は閉じてたのに、遠慮がちにだけども蕾が開きかけてます 雲間から差し込む光が、刻々と山稜を照らす 「五輪尾根」光を受けた草紅葉は黄金色 風にそよぐ「カライトウ」 日本海側の森には、その降水量の多さからか、登山道脇にさえ、元気一杯に根を張り巡らせ枝を伸ばした大木が育っている。途中で何枚かのスケッチをするのに、幾度か登山道でうずく まり、日も暮れかけた16:00くらいに下山した。 前夜に天場で会話した隣のテントのお兄さんが、まだ駐車場に居て、「いやぁ〜ホント参りますね。ここへの上り返しは。すっかり疲れてしまいました」と、風呂上がりの姿で迎えてくれた。 彼は白馬大池方面から歩いてきたので、昨夜のうちに蓮華温泉への下山路のことを尋ねて来たのである。「蓮華温泉までが、とことん登り返しである」ことは、そこで伝えてあった。 遅くなったので温泉は諦めていたが「受付は4時までですけど、まだ登山者だったら言えば入れてくれますよ」という言葉に、ロッジへ。 「ホントだったら、もう終わりなんだけどねぇ」渋々といった風情の親父さんに、(じゃ、いいよ道の駅で)と、一瞬ムッとはしたものの、(入れてくれるんなら、まぁ折角だから入っていこうかな) と、奥に通して貰う。 雪の時期とは違って、高い雪壁に覆われては居ない内湯からは、大きな朝日岳が夕暮れの中に浮かび、湯は熱すぎたけれどなかなかの眺めだった。 「来年は国際氷河研修から帰国したら、真っ先に初夏の朝日岳(小屋?)に来よう」 独り悦に入った私は、汗も落としサッパリして車に乗り込み、真っ暗な林道を下って、再び山梨の家路についた。 ちなみにこのお兄ちゃんは風呂上がりでもまだ居たので、別れ際に「これからじゃ遅くなりますね」と問うと「あ、大丈夫です長野ですし」とは、言っていた気がする。 その後の春にスキーの練習で八方へ行き、帰りに寄ったモンベルショップ。モンベルグローブが今年から改良されたと聞いて立ち寄ったのだが・・・グローブの握りを確かめていたら、エプ ロンした店員さんに「何かご質問があれば」と声を掛けられ、顔を上げたらこの兄ちゃんだった。 「あれ?」お互い驚いたけれど、そういえば、長野は長野でも「安曇野から来たんです」って、言ってたな・・・。 「よくテントを担いで山は歩く」のだそうで「また何処かの山で会いましょう」そういって、ショップを後にした。
山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています |