す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
錫杖岳で一般的に登られるのが左方カンテと1ルンゼならば、この他でもう一本挙げられるのがこの「注文〜」ではないでしょうか。 この「注文の多い料理店」かつて私の山岳会の先輩が拓いたルートであり、当時としては先鋭的なオールフリーを目指したラインだったようです。短いながらも傾斜は強く、十分奮闘出来 る充実した内容です。 一応はクラックとして名が通ってはいるものの、ビレイポイント以外の全てのハーケン、ボルトを排除したルートである以外は、ジャミングをほとんど必要としない、フェース技術でも登攀可能 なラインでしょう。 ただし、ナチュラルプロテクションでのリードに慣れていない方は苦労します。通常ハーケンやボルトといった残置物を使う方は、他のエリアで練習をしてから挑みましょう。 開拓をした先人や、このルートを美しく保つ努力をした人たちに敬意を払って、残置物は一切残さないようにしたいものです。 ※注文の多い料理店以外の左方カンテ、一ルンゼもビレイ点以外、ハーケン、ボルトを使用せずカムとナッツだけで登ることが可能なのでチャレンジしてみてください。もし二度目の登攀で あったとしても必ず充実します。 岩の殿堂である、風格ある姿の錫杖岳。その前衛壁の正面左寄り。白壁の右側を抜けていくのが1ルンゼ。その更に左の凹角が左方カンテ。そして更に左、北沢フェイス側に回り込みと 「注文の多い料理店」があります。 標高は低く、落葉樹が紅に染まる秋がベストシーズンだが、また新緑の春も捨てがたい季節です アプローチは錫杖沢の方が近いですが足場が悪く、下山時や濡れているときにはお勧め出来ません。 午前中は日当たりが悪く、朝一は寒い。また雨の後は乾くのも遅い。 午後は日当たりが良くなるが、左方カンテの下降ラインでもあるので、上からのロープや落石に注意が必要です。 さて、草付きの壁を2ピッチ程登ってからが核心です。 3ピッチ目、クラックというより、巨大なフレークの連続でレイバックで登れますが、足場をうまく拾えないと滑りそうで怖いでしょう。ハングにめげずに空間に体を思い切って出すのがポイン ト。思い切って行きましょう。 4ピッチ目、ワイドクラックが続きますが、特殊な技術は必要ありません。ただ、大きめのカムがあれば一つあれば重宝します。うまくプロテクションのカムをずらしながら登ると(A0しないよ うに!)、怖くなくて快適です。しかし上部のトラバースは濡れていることが多く、また最上部でのトラバースは岩場脆いので慎重にプロテクションをとって行動しましょう。 5ピッチ目、泥の詰まったクラックで、悪そうですが、平行にもう一本クラックがあるのでレイバックなどを駆使すれば意外に簡単に登れます。プロテクションもばっちりです。それよりも左方 カンテと合流する前のスラブが傾斜が無くなる分ホールドが細かくなっているので要注意です。 このルート、傾斜の強さに構わずガシガシ登っていきましょう。被っているハングも、思い切った動きでなら越えられますが、逆に躊躇していると腕力を吸い取られてしまいます。 クラックがきれいに同じ大きさで続いているため、プロテクションはうまくずらしながら登ればキャメロットワンセット(#5まで)あれば行けるでしょう。もしよければ、黄色と青は2セットあると 良いかも。 これまでの練習してきた岩登りの技術を試す、良いテストピースとなるルート。頑張ってきた人には楽しめる一本でしょう。 左方カンテをオールカムで登って、注文を3ピッチで下降、また注文を登り返すと11ピッチのナチュラルなルートになり充実します。 頂上を目指し、見張り塔に繋げるのもよい山旅クライミングになるでしょう。 錫杖岳(この他のルート) 1ルンゼ 左方カンテ 錫杖岳からのロケーション(晩秋の穂高連峰が見渡せます) 錫杖岳全景
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