八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属


 2008年 8月  北アルプス・無雪期 剱岳・八ッ峰六峰フェース〜八ッ峰・本峰        

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八ッ峰・八峰付近


 最近の定番コースに行ってきました。
 このコース、技術的にはそれほど難しくはないのですが、とにかく長い行程となり体力勝負となります。
 長治郎谷を登り、八ッ峰六峰フェースを登攀後、そのまま八ッ峰上半から北方稜線を縦走し、頂上経由で下山します。これらの行程をこなすには、体力は勿論、行動、準備の無駄をなく
し、全体の行動時間を少しでも詰める必要があるため、今後のステップアップを考えた場合、よい経験となるはずです。
 登攀技術を高めるだけではなく、このような辛い行動が継続的に続くコースに慣れていれば、より大きな山行を狙えるようになるでしょう。

  2008年 8月9日〜11日
 1日目:室堂〜剱沢小屋
 2日目:長治郎谷〜八ッ峰六峰Cフェース〜八ッ峰の頭〜北方稜線経由・本峰〜別山尾根経由・剣山荘
 3日目:室堂へ下山


 1日目は剱沢小屋へ各自集合。
 室堂から剱沢小屋までは明日に疲れを残さないように、ゆっくり歩くが、それでもなれた人なら3時間はかからないでしょう。
 
 室堂は大勢の観光客で賑わっていました。 剱御前小屋の石垣は、まるでお城のようです。



 2日目は2時起床、3時出発。
 剱沢を下降し長治郎谷の雪渓を登る計画だが、出発が早すぎると暗い中での雪渓歩きとなりちょっと怖く、行動を考えると遅く出るわけにもいかない、微妙な時間設定です。
 雪がしっかりとついていて、落石の危険が小さければよいが、この時期はちょっと心配です。

 長治郎谷は夏の遅い時期になると、ちょうど八ッ峰の一・二峰間ルンゼの辺りで雪渓が切れているが、今回は繋がっているため、そのまま六峰付近まで雪渓を歩くことができました。
 
 暗い中、長治郎谷を登ります。 快適な雪渓が主稜線まで続いていました。



 六峰フェースは最も効率のよいCフェースを登ります。Dフェースも一気に六峰の頭付近に登れるのですが、ちょっと難しいので時間を考えるとCフェースに軍配が上がります。
 ルートは定番の剣稜会ルートで、登り初めは6時30分。
 1,2ピッチ目はパッとしませんが、3ピッチ目からは岩も安定し、高度感も出てきて楽しくなってきます。
 4ピッチ目はハイライトのナイフリッジ。
 5ピッチでCフェースの頭に到着。時間は8時頃でした。
 
 ナイフリッジがこのルートのハイライト。  でも実際にはフェースクライミングです。



 八ッ峰上半の縦走は懸垂下降を含めたロープワークとルートファインディングをいかにスムーズにこなすかがカギとなります。
 Cフェースの頭からDフェースの頭へひと登りしたあと、六峰の頭とのコルへ短い下降、六峰の頭に登り返して、すぐにまた30メートルの懸垂下降で七峰との間のトラバース道に降り立ち
ます。
  
 六峰の登りは快適です。懸垂下降点までは自由時間。 隣のDフェースにも登攀者がいました。
 


 懸垂下降かクライムダウンか。
 今回は3人とも懸垂下降をしましたが、もしスピードを上げるなら二人はロープにぶら下がってロワーダウンし、最後の一人だけが懸垂下降をするのが最も早く、ロープも絡まる心配もない
ため、効率がよいでしょう。勿論、二人だけの場合でも二人が懸垂下降をするよりも早く、効率がよいのは言うまでもありません。

 今回はトラバース道を進み、七峰を巻いて、八峰の登りで八ッ峰主稜線に復帰しました。
 七峰は、六峰程ではありませんが、長いピーク状をなしていて、結構な時間がかかります。今回のように午後の天気が怪しいときには巻くのも一つの手だと思います。


 チンネにも登っている人がいました。

 七峰を登る場合ですが、そのままトラバース道を進むと八峰とのコル付近を経由し、クレオパトラニードル方面に進んでしまうため、何処かで八ッ峰の稜線に復帰する必要があります。
 よく行くのはトラバース道を少し進んだ辺りから、ガレた凹角状を八ッ峰の主稜線に向かって登り返すのですが、これが最も効率がよいと思います。
 七峰も最後は30メートル程の懸垂下降で、八峰とのコルに降り立てます。

 八峰の登りは、トラバース道の一段上のテラスから脆い凹角を登ります。顕著な凹角なので解りやすいと思います。八峰のピークまでは70メートル程はあり、何処かでピッチを着る必要
があるでしょう。あるいは、途中に支点をとりながら同時登攀で抜けるのも一つの手です。残置も少しはありますが、カムがあればかなり有効です。
 
 八峰への登りは岩が浮いているので注意! 上に行くと快適になります。



 八峰のピークからの下降はちょっと面倒で、短いけど急な下降が二回続きます。今回は二回とも懸垂下降をしましたが、クライムダウンではかなり難しく、やはりロワーダウンと懸垂下降を
交えた方が良いでしょう。
 これまでに行ったことはありませんが、最初の下降を三の窓側に行い、そのあと、バンドをトラバースするようにして八ッ峰の頭とのコルに登り返すのが最も良いのかもしれません。

 八ッ峰の頭への登りは一見どこだか解らないかもしれませんが、コルから5メートル程トラバースしたところにある凹角を登ります。最初のトラバースのバランスが微妙なので、ロープの流
れは悪くなりますが、残置のリングボルトにロープをかけておいた方がよいかもしれません。
 
 八ッ峰、最後の登りはこの凹角を登ります。  八ッ峰の頭付近は大岩が積み重なり、不安定ですが、景色は最高です。



 八ッ峰の頭からは懸垂下降は50メートル一杯で下りられますが、かなり石が浮いていて、しかも下には池ノ谷ガリーがあるので、クライムダウンがよいでしょう。あるいはロープの束を持っ
て少しずつ出しながら下りると良いと思います。
 池ノ谷乗越には12時に到着。八ッ峰の行動が意外に時間がかかってしまいました。


 池ノ谷乗越からは準一般道である、北方稜線を本峰まで向かいます。ここもルートファインディングが微妙です。ピークを巻く場合には基本的には長治郎側を進みますが、一カ所だけ池ノ
谷側を巻く部分があります。
 
 北方稜線の最初の登りは不安定なガリーからリッジに出ます。 一カ所だけ池ノ谷側を巻いて進みます。



 最も迷うところは剣尾根の頭から長治郎の頭付近ですが、ここは3通りあり、稜線上をすすみ、池ノ谷側のバンドをトラバースするもの、主稜線よりちょっと下の長治郎谷側にあるバンドを
行くもの。これら二つはピークを巻いて同じところに出ますが、ここから懸垂下降、もしくはクライムダウンです。10メートル程で短いのですが、急なので慎重な行動が必要です。
 もう一つは主稜線から長治郎谷側の30メートル程下にあるバンドをトラバースするものですが、クライムダウンもありますが、ほぼ歩きだけで行動できます。ただし、ルートが解りにくく、足
場も悪いので剱岳本峰から北方稜線に進むときに有効なルートでしょう。
 


 本峰の登りはこれまでの悪いルートからかなり解放されますが、それでも浮いた岩が多いので注意しましょう。
 
頂上への登りはこれまでの行動に比べれば、楽勝です。


 頂上着は13時40分程。
 20分休憩し、14時出発、16時剣山荘着。
 今回の、Iさん、Kさんがかなり強かったので13時間で行動できました。
 もし自分たちで行かれる場合、本峰までの全行程をロープを付けて行動し、このぐらいの時間で行動できれば本当に山行の幅が広がると思います。よいテストピースとなるでしょう。
 
 頂上からの別山尾根下降は、これが一般ルートでよいのでしょうか?


 3日目は室堂へ下山するだけですが、2日目の行動がきつかったせいもあり、室堂への最後の登り返しはフラフラでした。
 まあ、それだけ充実するということです。

 




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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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