す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
「残雪期の富士登山について」 山梨県民である私達には地元の山!恒例の富士登山に行って来ました。 「富士登山」とは言っても、勿論夏ではありません。富士山が白い雪に覆われて、それが山頂まで緩んだ残雪期です。冬も寒かったこの春は、なかなか気温も上がらず、この日も9合目か ら上は、アイスバーンでアイゼンが必要でした。 一定した傾斜の続く残雪期の富士登山では、凍った斜面での滑落は許されないため(一旦滑落すれば傾斜が落ちないのでそれを止めるのは容易なことではありません)、山頂の予想され る最高気温が、少なくとも氷点下を越えない日を選ばなければなりません。 顕著な単独峰である富士山では、その風も考慮にいれなければならないからです。 気象庁のデータから見ても、この5月に富士山頂の最高気温は0℃を上回った日が極めて少なく、昨日でも最高気温が0.7℃。それに山頂付近では風が加わりました。この日は富士山で は一般的な程度の風速でしたが、それでも山頂付近ともなれば、微風とはいきません。 風が強くなり始めた8合目くらいから、雪面は徐々に中が柔らかく、表面は風に晒されて凍ったウィンドクラストに変化し、やがて9合目付近からは板のエッジも食い込みにくいくらいのバー ンになってきたので、火口壁の淵である3700Mまで残すところ50Mという付近で板を外し、シールを外して下降に移りました。 もし凍った斜面での、道具の(スキー板にしろアイゼンにしろ)準備に不安があるのなら、斜面が硬くなり始めたと気がついた時点で、アイゼンに切り替えるなり滑降に移るなりしなければ、 アイゼンや板が装着できなかったりする可能性もあり、また道具を流してしまったり、という致命的なミスにも繋がりかねません。そうなれば登るのも下るのも、更に困難になります。 当たり前ですが、硬い斜面での道具の準備は、雪を平らにして安全なスペースを確保することすら難しくなることをお忘れ無く。 安全を優先して、早め早めの判断を心がけましょう。 重ねて記しますが、富士山での滑落は長大な滑り台を落ちるのと同じで、致命的な事故ととなりやすいことを覚えておきましょう。 特に富士山の頂に近いこの辺りまでは、どの登山口からであっても既に1500M前後の標高差を登ってきているはずです。 9合目や8合目からは、特にこれまでの労力と酸素の希薄さによって、自分の身体が疲労困憊状態であることも考慮すべきでしょう。強すぎるくらいの警戒心と、そして早めの判断をするこ とは重要です。 (ちなみに3700Mの火口壁までの標高差は、吉田口からは1400M、須走り口からが1700Mとなります) 須走り口の駐車場から、ブル道を歩く(登山口に回れば、五合目の茶屋もトイレもあります)←飲料には使えません 計画段階での重要な指標となる、最後日に予想される天候、気温、風速。そして行ってから判断する雪の変化。予報によっては出発を早める、または雪が緩む時間に遅らせる、といったこ とも必要です。(スキーでなければ、下山時間もそれなりに掛かることも考慮して) 「自分がどれくらいの斜面ならば、安全に、かつ怖がらず降りられるか」ということを加味した上で、板やアイゼンなどの道具を選び、行くか戻るかを判断する。 後は下山。広い裾野は下山の角度をを少しでも誤れば、全く違う方向へと下山してしまい、またその温度差で春は殊の外、裾野ほど霧が出やすくなります。コンパスと2万5千分の一の地 図は携行し、せめて霧が上がってくる前には登山口の方向を確認して、下山方向の角度は出しておきましょう。 最も、間違えたとしても吉田口や須走り、御殿場口と行った裾野は、自衛隊の演習場に行き当たる訳ですが、そこでは射撃や戦車による砲撃訓練も行われているので、安心・・・というより は、別の意味でもっと「怖い」かも?しれませんよ。。。 そうは言っても富士山ほどの規模の裾野は、国内でも有数の広大な雪原となります。 これらのことを守れば、自分の雪山技術や養った判断力を駆使して、そのだだっ広い雪の斜面を歩き、日本一の山頂を極めることは、夏の単調な一面の火山灰フィールドを歩くのとは違っ た、無情の喜びが感じられるのではないでしょうか。 「登高時のターン・板の基本操作」 板を履いて山を歩く時、近頃、最も気になるのが、スキー登高。 皆さん滑り系の人が山に増えているので、滑降技術は素晴らしい人が多い。なのに、登る姿は「アレ?」なのである。 滑降も技術ならば、スキー登高も技術である。なのに多くの人の関心は滑ることにあり、登りは意外にテクニックは要らないと考える人が多いのではないだろうか? 最近のスキーがツアー系というよりは、ハイクアップではなく、リフトアップが中心となってきたせいもあるのかもしれない。 歩きつつ周囲を見回してみれば、折角の兼用靴にハイクアップ用の高価なビィンディングが活用されていない。 ターンが苦手なこともあってか、シールが効かない限界傾斜で直登あるのみ。ヒールサポートをマックスに上げて(この時点で荷重が乗りにくくなってシールの効きも悪くなる)猪のごとく直 進。結果シールが効かなくなって、勿体ないことに担いでしまう姿も少なくはない。 当然ながらツボ足の方が、板よりも浮力がないので沈む=重い板を担いでしなくとも良いラッセルをして、無駄な労力を使う ターンが上手くなれば、スキーツアーは数倍楽しく、何より楽になります。 さあ、ターンの練習をしましょう! キックターン @ターンしたい場所に近づいたら、斜めに登ってきた登高ラインから、フォールラインに対して水平に進入する。 ※どんな傾斜で登ってきても、ターンする時には板を水平に近づけることが重要。 Aターンする場所に水平に立つことができたら、山側の足を前に振り上げる。 ※ここで、山側の板の向きを変えようとするのではなく、前に振り上げることがポイント。 B山側の足を前に振り上げると、写真のようにテールが雪面に当たり、板は勝手に反対側に向きを変えます。 ※無理に山側の足の向きを変えようとするのではなく、足を前に振り上げる感覚です。 C山側の板の向きが変わったら、山側の足一本で身体を支えます。 ※@〜Bを丁寧に行えば、2枚目の写真のように、足を大きく開くことなく、谷側の足とほとんど同じ位置で立つことができます。 D山側の足一本で身体を支えたら、谷側の板の向きを山側の板の向きに揃えます。 ※向きを変える方法は二通りあります。 傾斜の緩い時は板をいったん蹴るようにして、その反動でテールを浮かせて一気に向きを変える方法。 傾斜の強い時は、足を後ろに延ばすようにして、軸足のにトップを移動させてから、テールの向きを変えて板を揃える方法(写真3/4枚目) 写真右側がフォールライン ※左の足を前方(写真上方)に振り上げると、テールが雪面に当たります。 下の足が谷側、上の足が山側 ※水平に立ってから、山側の板の向きを変えると、足を大きく開く位置でなく、上体の真下で向きが変わります。 重要なのは、次の谷足となる左足を、しっかり水平に置くこと。そして右足の出来るだけ近く、すぐ前に、置いてやること (ただし、近すぎて反対側の自分の板を、テールで踏まないように留意する) こうすることで、左右の重心が近くなり、次の重心移動が楽になります。 あなたのターンは、この同じ瞬間、いわゆる「逆ハの字」になってはいませんか? 「逆ハの字」だと、板のテールはフォールラインにより近くなるので、ターンの最中に板が後ろ滑りします。 そして左右の重心が遠すぎるので、重心を次の谷足に移す移動距離が長くなって、重心移動そのものがが至難の業となってしまいます。 軸足よりも後ろに足を移動させる(説明C、D) ※谷足(左足)が水平に決まっていれば、ターン中に板が落ちて行ってしまうことはない この持ち上げた右足は、よく見ると上に浮かせるのではなく、右膝を曲げて引いていますね。これにより、ビンディングから離れてしまった板のテールは雪面に引っかかりにくく、また引けば トップも前の雪面には引っかからなくなります。 皆さんトップが引っかからないように、足を大きく上げますが、これだと踵が下がる=テール側が落ちてしまって雪面に引っかかるのです。 ターンする場所は平地ではなく、斜面なのですから、後方には雪面はありません。 邪魔になるのは前の雪面なので、板を持ち上げるのではなく、引きましょう。 足を引いたまま、後は谷足に添えてやるだけ(この時、ターンに入る前には、谷側のストックをしっかり決めることも、お忘れ無く) さて、脱線しまくりましたが、ココでやっとの山行報告です!! 2012年5月24日 私達の出掛けるのは毎年、標高2000Mからスタートする「須走り口」。山梨といえば標高2300Mの吉田口ではありますが、小屋が連綿と連なる吉田口は、吉田大沢を除けばスキーに適 しているとは言えず、広大な北東斜面にあたる須走りが最も楽しいからです。 この週末には、富士山の周囲を一周するトレラン大会が3日間で開催されていたらしいのですが、翌日25日も練習なのか閉鎖、そして6月3日は「フジMtヒルクライム」という自転車レース で、この富士アザミラインは閉鎖される模様です。 24日(木)の山梨県は河口湖方面の予報は「晴れのち曇り」。台風が小笠原沖に接近、上層の気圧の谷に対して湿った南風が吹き込むということで、もう少し気温が上昇するかと思った ら、その影響を受けたのは平地だけだった様です。 逆に高い標高では風が冷たく感じられ、午後からは上空に雲が湧いたため、日差しが遮られて気温はあまり上がりませんでした。 富士山頂の気温は、気象庁によれば最高で0.7℃、平均ではー1.8℃でした。 ちなみに、この日の甲府の最高気温は、何と29℃を超えています! 甲府市の標高は概ね250Mくらいで、山岳に囲まれた盆地であることから日中の熱は溜まりやすく、朝晩は寒い。だから単純に標高差と気温差は比べられないのだが、同じ県内で温度差 が30℃近いってのは、なかなか凄いことですね。 雪質の変化もスキーでは重要です。22日(火)には降雪があり、我が家から見える富士山を初めとした鳳凰三山の比較的低い山稜まで、新たな雪がつきました。 水曜も木曜も天気予報や予想気温には大差が無く、23日(水)に初め見当を付けていたのですが、水曜の方が風の予報が強く、また雪質の変化を待ちたかったので、間1日を空けること にしました。 勿論この場合(風を考慮に入れなければ)、水曜日でも普通の登山であれば問題はないでしょう。 最新のネットで仕入れた情報では、週末入山したパーティーで、雪は2300M付近からとのこと。 間で雨は降ったものの気温は低かったので、雪の末端ラインは幸いにも後退していませんでした。 9:00 須走り五合目の駐車場を出て、20分ほどのブル道より(2000Mと少しかな?) 板はザックに付けて、靴はベルトのマジックテープで振り分けて、軽登山靴で担ぐ(2200M付近) このブル道の左に大きく曲がる辺りに、除雪のパワーシャベルが作業中ですが、その脇を、快く通していただきました 注:運動靴でもOKですが、火山灰が中に入って靴下までドロドロに・・軽量で嵩張らないハイカットシューズがあれば適してます もしくは運動靴でも、トレランシューズ用のスパッツなんかあれば最適かも 歩き始めて1時間掛からないくらいで、除雪点の上に到着して、兼用靴に履き替えてシール登高に(2300M付近) 靴は重くはないが、嵩張るので、ブル道に繋がる雪渓の岩の上に、目印としてデポ(2400Mくらい?この時点では快晴だったのだけれど) ただし、これは辞めた方が無難です!午後から湧いてきた霧で、靴を探すのに苦労しました。 雪渓は多少なら間違えても、藪を歩いて戻れるが、靴は置いていくわけには行きませんから・・・・ スイスのムーブメント社製151cmのNative (ネイティブ) は、女性仕様のツアースキーで、研修以来の超が付くお気に入り カービングもキツくはない、スタンダードな116/80/104。 こちらはメタルなしの替わりに、ムーブメント独自のキャップ構造を組み合わせて、しなりを出しているので、ツアーモデルの割にはバタつかず、滑走性能も従来のツアースキーより格段に良 い。 何よりも、私でもまとめた板が片手で持てるくらいに軽く扱いが楽で、これを一度履いたら山では他の板はもう履けなくなるくらいにGood! ツアーモデルとしては、こちらも最新モデル。国内では¥67000もする製品らしいが、シャモニのセールで40%OFF、¥30000以下だった。 この時点で、上空には寒気の雲があるなぁ・・・と、思いつつ、歩いてはいたのですが・・・ 背後に見える丘の辺りが、8合目の吉田口との合流点と思われる(ってことは、この辺りは3000Mを越えているでしょう) KT・・・幾ら今年は寒いからって・・冬毛で熊みたいだなぁ。 更に登っていくと、それまで後ろでドンパチ、今日は特に激しかった演習場の砲撃音が、ピタリと止んだのは、正午のこと。 「あ〜・・・お昼ご飯って、ワケね」 須走りから5人、尾根の向こうに居た吉田口からの数人を追い抜いて、火口壁を目前にした頃。 延々板を背負ってツボ足で歩いていた先行者にも追いつき掛けたが、この人は氷化した傾斜の強い火口壁を、苦心しつつも無理矢理山頂まで登っていった。(ピッケルは無かったようなの で、かなり怖かったのではないだろうか) 私達はあっさりそこで下山を決めて、準備。先行の人が早くも滑降し出すと、エッジが氷を刻む音が、ガリガリガリッと・・・これまた凄い。 「ま、マジ?」一瞬引いたし、その人自身も斜面に入ってみて案外その硬さに腰が引けた様だが、登ってきた距離からすると斜面は200Mも降りたら緩んで滑りやすくなるはずだ。(←転倒 さえしなければ) KTは踏ん張っていれば四輪駆動だが、座った途端にお尻が滑り落ちていく。。ぴ〜 板を背負ったり、登山靴を履き替えたりすると、やっぱり初めから雪の上よりも時間は掛かり気味になりました。 標高3650M、ここまで約4時間の13:10 と・・・裾野では、またヒュ〜ン、タタタタタ、ド〜ンと、機関銃や戦車の砲撃音が開始。「あぁ、お昼ご飯が、終わったのよね〜」 (ちなみに、自衛隊ミリタリーグッズの欲しい方は、帰りに「須走り道の駅」へどうぞ) 斜滑降とシュテムターンでスピードをコントロールしつつ、氷化した斜面を終えると、後は広大なバーンを滑り放題! そうは言っても、その繋ぎの斜面は完全に緩むまでは微妙にウィンドクラストした雪面なので、慎重にスピードを抑えていたら、前方で久野が、「あ・・・ひっくり返った・・・」 「ふ〜ん、やっぱり板が取られるんだな」と、思う間もなく、「お?またナンか・・・派手に前転したような?」 そのまま起きあがる素振りもないので、「おいおい?」と駆け寄ってみたら、あらまぁ血が滴って居る。シュプールは途切れて、妙な両板の後がハの字に並んでいる? どうやら最新の流行であるロッカーの板は、こういった目まぐるしい雪の変化には対応しにくいのだろうか? 私は瞬間は見ていないのだけれど、本人曰く、クラスト斜面に逆エッジを引っかけて前のめりに転んだ際に、TLT(ディナフィットのビンディング)の爪先は固定していたので、踵側のみが外 れて、スキートップが頭に跳ね上がり、裂傷を負ったと言う。 (※ロッカーでアイスバーンを滑ったのですが、谷周りでエッジが掛からないために板が足下に戻ってこない状況でした。・・・単に下手なのかも) TLTは歩行中だとロックするのが基本だが、通常だと滑る時には固定しない。けれど人によっては、滑降中に外れるのが嫌な人だと固定する。私は解放するようにしているが、これは氷河 研修中にも好みで分かれた。 が、ナンにせよ、ヘルメットは必須なんすね。やっぱり。 私もシャモニで購入を迷ったけれど、春しか滑らないので暑いし、何はともあれそのデザインが山に比べても(山用でもイマイチ格好良くないが)スクーター系なので、あまり格好いいとは言 えない。 ヨーロッパではゲレンデでもユーザーは多いし、子供ならまず被っている。昭和40年代辺りのように、みんなバイクでもノーヘルだった時代が、バイクみたいにヘルメット着用がフツ〜という 時代も、来るのだろうか。いや来ないか・・・罰金無いし。 少なくとも山では、日本でもTLTへの買い換え需要が到来しているようだし、勿論木にぶつかることだってあるし、頭からの転倒だってあり得る。 これからは、我慢してヘルメットしようっと。 で、そこからは快適な高速カッ跳び斜面でした。(登山靴探しには困ったけど) ちなみに画像は、あとは珍しく降りるのを怖がっていた久野が、デジカメを持っていたため、全く滑降シーンが無い。のです。 帰りも作業中だった除雪の兄さんは、通過するまで重機を止めてくれ、安心して通過させていただけたので、お礼を述べる。 ちなみに・・・マヌケと言いますのは、私も同様でして・・・(更に丸い置き針シールも、剥がすのがコワい) 「なんか、肘がヒリヒリ熱い?」と思ってはいたのですが、全く気がついていなかったコト。 氷河研修中は一度も半袖になっていなかったし、帰国後も仕事というほど働かず、よって今期初めて腕を出したらば・・・こうなりました。 しかも!右腕を故障中なのでサポートに張った「キネシオ・テープ」が、図らずも「マスキング・テープ」に、なっているではないですか? う、腕に模様が〜っ!! 痛すぎて、湯船にも浸かれません。。。 帰宅途上で病院に寄りました。久野は近所の時間外診療で頭を縫う、というより消毒してから、3センチほどの切った傷を、ナンと「ホチキス」で、ばっちんばっちん止められ、しっかりCTで脳 も見て貰っておいてから「麻酔の効きが良くないから痛いんだ」と、ぼやきつつ戻ってきました。 頭にバッテンのガーゼ付けて、お世辞にも洒落てるとは言えず、かなり間抜けな姿ではありましたね・・・おまけに脇には、一回目の転倒でやはり跳んできた板が脇腹に当たって、大きな青 アザまで作っている。 先日の白馬大雪渓でも、強風で敗退。楽しく滑れる傾斜ははチョッピリだった割には、デブリの壁から跳んで着地した際に脇を痛めたってのに、どうやらこの最新式ロッカーの板とは、とこと ん相性の悪そうな久野なのでした。 2011年5月19日 今年は寒い日が多かった春。 GWの後に続いた長雨で、ひときわ残雪の豊富だった富士山も、麓は大分と融雪が進んだようです。 出来れば氷河研修の前に、順応も兼ねて富士山は登っておきたい。けれど火山灰を歩いて降りるのは嫌。 こうして待ちかねた、平日の晴天。 水曜に出ようとしたら、まだ気温も低く風も強い。単独での入山に、ビーコンがバカ犬KTだけってのは、チョット心許ない。 そこで前線が通過した後の寒気や風も抜け、安定した木曜日を待ちました。 久野も加わっての富士山スキーです。 河口湖からの富士山には、中央に小嶽流し、左寄りには吉田口、そして左スカイラインの辺りが目的の須走りです あるある、ありますよ〜、雪っ 事前の下調べでは、1時間くらい歩けば雪に辿り着けるらしい。 」 富士あざみライン5合目からの斜面 8時過ぎに出発して、板とスキー靴を担いで歩く「遅いわよ、ネエたん?」「KT、オマエも何か担げよなぁ」 やはり雪までは1時間くらいの火山灰歩きだったけれど、一旦雪上にさえ出てスキーを履けば、スピードアップ! 吉田口頂上到着は、出発から約4時間後 シュプールを眺めながら呟く久野「わざわざお鉢の中を滑るなんて、物好きだよなぁ〜」 地震の影響で静岡側が閉鎖されているらしく、例年よりスキー登山者は多かったが、どうやら登りでそのほとんどは追い抜けたようだ 須走り側の滑降は、ありがたくトップを頂戴する 滑り出しはやや硬めだが、少し滑ったら緩んできて快適♪ 「ヒ〜ッ!アタイはたいへんよぅ!!」 「ニイたん、それ、暴走族らよぉ」KT 「きゃんっ」 「KT、おらおら邪魔だよっ」滑降はアッという間の30分 「火山灰になったら、アタイの方が速いんらから」 規則正しく並んで描けたシュプールは、上々の出来でした 「う〜ん登りの苦労も、アッという間に終わっちゃったよ。描いてきたシュプールを振り返ると、感慨深いよねぇ」 「ネエたん、遅いよっ」 駐車場には14時到着(道の駅からの富士山です) 今年はこんな風に、残雪を繋げました スキーを担いだ歩きが入っても往復6時間。雪さえあれば、楽々の富士登山です。 帰りは4月に開店したばかりの、涼しいピラニア富士吉田店で登って、充実した1日が過ごせました。 2009年5月12日
今年は3回全てが敗退に終わった富士山でした
富士山を登山として登るには、残雪期こそが最適な時期だと思います。スキーにせよ、歩きにせよ、雪上のまだ硬いうちに登って緩んでから降りてくるのが最も楽だからです。それに何よ
り日が長い。標高差が大きくまた標高の高い富士山において、日帰りは難しく、かといって高所への滞在は体の負担が大きい。それを日帰りで登ることを可能にするのが残雪期登山なの です。
ちなみに私は個人的に、雪のない富士山はむしろ嫌いです。植生に変化が乏しく、火山灰の単調な曲折には飽きがきます。(昔は雪の無くなった富士宮口からも登っていました)それで
も残雪期は楽しい。雪上を渡る風も心地よい。
そしてそれがスキーなら文句なしに楽しい。が、特別標高の高い独立峰だけに、天候や風は急速に変化し、なかなか気難しい山であることも確かです。今年のGWにも富士宮口の山スキ
ーで行方不明の方が出たらしく、また初冬の雪上訓練での滑落死は後を絶ちません。
(先日は須走口の駐車場でも、花と写真にお線香を供える姿が見られました)
それ故、他の山に比べればより用心深い行動が必要となります。
昨年は3度ほど頂に立った富士山ですが、今年は縁が無かったのでしょう。ちょっと残念、というか、順応をしておきたかったのですが仕方ありません。
5月12日
この日は久野とともに1,959bの須走口へ。既に5合目付近の雪は消え、直登のブル道を辿って40分ほどで雪が現れる。2,200b付近。
5合目駐車場から感じてはいたが、やはり風が強い。このままでは上へは行けないので日を改めようということになった。
5月15日
単独。小淵沢での起床時で既に寒い。富士山には気温が適さなかったので、乗鞍岳に転戦。
5月19日
再び久野を起こして須走口へ。1週間でかなり後退した残雪。ブル道の先には除雪のパワーシャベルが入っていた。1時間板を担ぐ。
気温が上がらず雪面は初めから硬め。残雪の末端は2,300b。
南岸からの低気圧の接近が思ったよりかなり急速らしく、気圧がどんどん下がっていく。そしてそれに伴う風も強さを増す。
久野は初回と同じくスタートから頭痛を訴えていたが、気圧の変化が激しいせいか?さほど登ってもいないし標高も低いのに、私までこめかみに圧迫感を感じ、やがて痛み出す。それでも
折角板を担いだのだから、としばらく頑張ってみた。
でもやっぱり風は強く、2,500b付近でも雪はかなり硬い。気温は12度ほどなのだから緩んでくれないのも無理はない。
ここで敗退。他にも10人くらいのスキーヤーは居たが、数人は同じ辺りで下っていった。
降りだしてもエッジがガリガリ氷を削っていくくらいだから、上へ行くには行っても皆どうするつもりなのだろう?
翌日の登山道整備は気温が高く、甲府では30度を上回ったそうだ。
何とも縁のない話の、今年の富士山なのでありました。 2008年4月
5合目登山口を出てしばらくで、こんなに広大な雪原に出会えます
一番近い県内で滑る山。
それはやっぱり富士山でしょう。
けれど週末は人が多い。しかもスバルラインは高いぞ?
って訳で須走登山口に走る。ETC割引があるので時間調整しながら走って到着は7:30。
標高も低めで一般的でないだけに、登山口も混雑はしていなかった。
須走口駐車場「なんか、遠いヮ??」
既に板の準備をいている山岳会系?のグループがいて、次々に歩き出していく。
8:00出発。一度は歩き易いであろう御茶屋側の一般登山口から入ろうと思ったけれど、案外駐車場からは降りるので、彼らの向かった踏み跡を行くことにした。同じく単独の男性も前後しな
がらスタート。 彼は若いらしく、先行グループも抜き去って、更にパワフルにシールの限界に挑む傾斜で登っていった。
私は?といえば、まだ子供で誰彼構わず人にじゃれつき、リードのは外せないKTにまとわりつかれ、他の登山者から離れるまでかなり気を遣わねばならない。目が離せないのは同じ、人
間の子連れ登山も一緒だろうけど、監督者は複数居ないと大変だ。
一昨日の疲れも抜けていないので、須走の広い斜面全体を使いながら、傾斜は殺して登っていく。
降りてきて解ったことだが、スタートからしばらくは板を担いだけれど、駐車場奥から真っ直ぐ上に向かって延びる登山道なら初めからシール登高が出来たようだ。
30〜40分も歩けば広い雪原に出た。須走口は吉田口より300bは低いものの、邪魔な山小屋の群れが無く、広大な雪原が気持ちいい。何処にどういうラインを取ろうと、自由自在である。
今年は5月中も気温がやけに低かったこともあって、表面の雪はまだ新しいかった。
「アタイ、もうラメら〜?」
天候は次第に崩れる予報。この広大な斜面では下山方向がわずかにずれただけで、とんでもない場所に下りかねない為、まだ見えるうちに頂上と登山道を結ぶ角度でコンパスを合わせて
おく。
多くの登山者が居る吉田口寄りの斜面を避けて、広くライン取りをしていく。それでも8合目当たりからは吉田口に合流していくために、人の数はグッと増えてきた。
迷惑になりそうだから剣が峰はよしておこうと、シールを外す傾斜のないスペースに移動しようとした頃合いで、KTが音を上げた。
この日の気温は低く、吉田口登山道へのトラバースは、既に硬めの雪となっている。
もう近くに見えている9合目の鳥居までは移動して滑降準備に入りたかったのに、一度止まったらテコでも動かない強情さが売り?であるKTお嬢様である。
リードをどちらに引こうが「伏せ」一点張りのKTに仕方なくこちらが折れ、斜面で準備する。上には頂上小屋があるだけに、硬い斜面で落石が来たら堪ったものではない。大急ぎで滑降に入
った。
時間は登山口から5時間が経過している。富士山にこんなに掛かったのは初めてかもしれない。
剣が峰をバックに 「きゃんきゃんっ!置いてっちゃイヤ!!」
いつもながらキャンキャンやかましい奴だ。置いて行かれまいと下へ下へと回り込んで危ないので、出来るだけ離れられるようこちらもスピードを上げざる得ない。
必死の形相で着いてくるKTをたまに待ちながら、風の少ない緩んだ斜面まで急いで下る。まだ登ってくる人も多く、下りも大きく離れたライン取りをしながら、最後の登山道入り口を目で追
う。ガスが上がり始めて来たからだ。
次々とガスに覆われては晴れる麓が、いざ登山道への入り口になった当たりで完全にホワイトアウトとなった。こうなると雪面の傾斜も解らないので、騙しだまし降りるか、晴れるのを待つ
か、しかない。
一時待って諦め掛けた頃、スッと下の斜面が見えた。今だ、入り口に間違いは無さそう。
狭い谷の中に入ってしまえば、後はそこを下へ下るだけ。何処まで下ればいいのかな?と、思う当たりで上ですれ違いに下っていったボーダーの子達の、休んでいるのに行き当たった。こ
ちらも犬連れ。 しかもKTより更にでかい、ボーダーコリーの姿はしていても標準よりはかなり大きな男の子である。
相手の大きさにシッポ巻きまきのKTだが、それでも2頭で大暴れ。大型犬同士なだけに迫力がある。
「それだけ暴れる余裕があるんなら、上で歩けよな・・」
上からは板を担いだ二人が降りてきて、「この子達の写真を撮らせてください、歩くのが速くてビックリしました」と言う。上に行った犬はKTしか居ないので、どうやらこいつのことを言っている
らしい。
行きとは違う辺りまで降りたようなので、彼らに習って板を担いだら何のことはない。まだずっと雪は駐車場近くまで続いていた。
かなり降りてきた頃になっても、先のワン君がまだ遊びに来る。「お〜い君、ご主人様は?」
あっという間に駐車場脇に出て、後は雪を入れたビニールでアイシング。そこから甲府南にあるピラニアに向かって走るも、河口湖周辺は渋滞が酷い。
私がウンザリしながら運転するのをよそに、KTは後席で大いびきをかきながら爆睡していた。
子供なのをすっかり忘れていたが、よくよく考えてみれば人間でも、体が発育過程の子供は高所に連れて行ってはならないのでありした。
ちなみにフランスでもモンブランに登るには(民間で言われてるだけかも知れないが)年齢規制があるようです。
高度の影響からか、北ノ俣岳では往復9時間歩いても翌日ピラニアで暴れていたことを考えれば、その後2日程は流石のKTもグッタリ疲れていて、まだ一年未満の子犬に、高所は早すぎ
たかな?と反省。
まだまだ今年はいけそうな富士山。だけどKT、今年ははもうお留守番だね?
山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています |