八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属

 2010年 1月他 八ヶ岳・積雪期 石尊稜         

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2010年1月23日(日)

余りに混んでいる小屋、天場を目にした久野達は、赤岳主稜から石尊稜へ転戦。
が、考えるのは皆同じ事。ガイドパーティーの集中した石尊稜では、全くの順番待ち無しというわけにはいかず、むしろ皮肉なことに赤岳主稜は意外と空いていたのでありました。


この日は寒さは厳しかったのですが、それゆえルートは最高のコンディション。
普段は草付きや土が見えたりするのですが、今回は全てがエビの尻尾に覆われて、上部、下部の岩壁でも岩を登るというよりは、アックスをエビの尻尾に効かせて登るようなクライミングで
した。



 

全てがエビの尻尾に覆われています。

 
まるでパタゴニアかベンネビスか。・・・行ったことないけど。



最後のルンゼも全くガレ場は見あたりません。

滅多にこんなコンディションにはならないので、楽しかったです。



2009年12月29日(火)

今年の冬、シーズン初めは暖かな期間が続き、積雪はまだ少ない。
先週末は大寒波に覆われた八ヶ岳も、次の正月寒波を控えて、穏やかに晴れてくれました。
 
少ないとはいえ風によって再び埋められた、アプローチのラッセルをこなした後は、1ピッチ目から微妙な傾斜での、デリケートな登攀が要求される
草付きに、しっかりとダブルアックスを決めていきましょう  

 
中間部はこうやって晴れていれば、サイコーに気持ち良い雪稜が続きます

 
雪稜からは再び上部岩壁へ   変化に富んだルート構成こそが、この石尊稜の魅力です

下記の山行記録とは、ほとんど同じ日付の石尊稜なのに、条件次第では全く違った表情を見せる冬山。
これがまた、自然を相手に挑む面白みなのですが・・・



2004年12月30日(木) 
 今シーズンの冬山は雪がない!毎日天気が良すぎるなぁ、と思っていたら・・・・世間が休みに入った途端、正月寒波がやってきました。
八ヶ岳は連日雪雲に覆われ、28日は比較的好天に恵まれた横岳縦走でしたが、天望荘で朝は−25℃に。29日も粉雪が舞い続け、30日の朝もやはり雲行きの怪しい空。なにか不安な
ものがよぎる?暗い空ではありました。(↓撮影佐野さん)


 後で解ったことだが、当日の気温は稜線で−25度以下。風も強かったので体感温度は−40度近くにはなっていたはずです。

 赤岳鉱泉6:50発。一般道から外れるところにはトレースがあって、もう先行者がいるのかと思ったら、そのトレースは小同心ルンゼへと続いていた。一体何処を登るのだろう?さて、ここ
から先は三叉峰へも石尊稜へもトレースは無い。重くはない雪だが膝丈ラッセルで、下は河原だから歩きづらい。佐野さんも交代して歩いてくれる。取り付きに着いても石尊稜のほとんどは
霧に包まれ、傾斜のない下部岩壁は雪に覆われている。右上からは中山尾根のコールが聞こえる。朝食前に発ったガイド組の声だろう。
 
 「ちょっと、ヤな感じ」ではあったが中山尾根組も頑張っているらしいし、こっちも頑張らないと、と装備を身に付けスタートした。
すると、1ピッチ目取り付きの下で八ヶ岳の主、Oガイドが現れた。これ以上心強い存在は無いってくらいの人だから、改めて気合いが入る。1対1で、しかもいつもハイスピードのOガイド
は、あっという間に下部岩壁を右から巻いて霧の中へ消えて行った。
 私は、というとバカ正直に真正面から突っ込んで行ったら、雪を払いつつ岩に乗る「まさにこれぞ冬壁クライミング状態」になってしまった(今考えると、より困難を求める?ルート取りだった
かもしれない・・)。これには八ヶ岳のバリエーションを既に何本も登っている佐野さんも苦労し、まだ先が長いのに不安がよぎる。

1ピッチ目・出来るだけ岩を登るようにすると?イヤらしい

 ここからは通常、美しい雪稜クライミングが続き、快適かつ楽しい登ハンが出来るはずなのだが、視界は悪く雪も吹きつけ何より寒い!
雪は終始膝丈で降雪直後のためにフカフカ。
  

 先頭パーティーにならなかったのでいいが、そのトレースも上部岩壁につく頃には風雪で消えた。上部岩壁では支点が雪に覆われて判らなかったが、お客さんを凍傷にしかねない状況だ
ったので、ランナウト(支点を取らない)したまま、気合いで登る「こんなのフリークライミングじゃあり得ないー!!」心の中では泣きながら・・
 
上部岩壁とその先

 ともかく足も手も冷たく、私の念頭には、昨年この石尊稜で顔面中凍傷で黒くなって戻った某パーティーのことが残っていたため、急いでガンガン登る(ちょっと登りすぎて石尊峰の頂まで
登ってしまったくらいの勢いだったけれど)。

 稜線についてホッと一息入れたのは13時過ぎでした。お茶で生き返った気分になっていたところへ、道畑さんの、「これで還暦の良い記念になりました」ってセリフにまたぶっ飛ぶ。「か、
カンレキですか?」(・・実はうっかり気づいていなかった)
 今回が初のバリエーションで、この風雪の5時間を超える石尊稜を還暦で登る?これで八ヶ岳入山が6日目であった私が、「そろそろ疲れたなぁ」なんて言ってる場合じゃない!っていう、
比較にならない凄さです。人間の力って偉大だ!
 
 帰路、地蔵尾根下部でアイゼンを外すのを嫌がった道畑さんでしたが、外してみれば何のことは無い。スイスイ歩いて下っていきます。
そうなんです。前日の氷上訓練は勿論、バリエーションに比べれば一般道を下るくらいは何でもないはず。荒天の中を1本のルートを完登したことは、今後のためにも大きな自信に繋がるこ
とでしょう。メンバー全員がレベルアップした1日でした。


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