八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
龍王岳東尾根〜立山三山縦走〜剱岳別山尾根往復〜室堂下山 2012年5月18日 GWもですが、5月に入ってからも降雪に見舞われる日の多い、今シーズンの剱岳エリア。 またまた山行直前に、大量の降雪がありました。 そこで剱岳は八峰からの変更は、嵐の一日目は室堂山荘までとして、二日目に龍王岳東尾根を登り、立山三山を縦走し、剱沢小屋に入る。 そして三日目が、別山尾根から剱岳を往復して、その日のうちに室堂へ帰る。という、実質1泊2日の強行軍となりました。 こんなコース、誰もが行ける訳ではありません。 室堂山荘の玄関から雄山と一ノ越を望む 奥大日岳とちょっとだけ見える立山ターミナルの屋根 浄土山 美しい黄昏時のこの画像からは想像もつきませんが、実はこの日中は大荒れで、室堂平の中でさえ宿に行き着くのも大変なくらいの吹雪だったそうです。 2012年5月19日 さて、本日の剣沢入りは、龍王岳東尾根から立山三山を縦走する、長〜いアプローチ。 降雪のあった剱岳でも、最奥の尾根に位置する八峰へは、近づけそうになかったための変更です(←今年はこんなのばかり?) 「龍王岳東尾根」全景を眺めながら、一ノ越を下っていく 新雪混じりの岩稜を登る 眼下の「雄山谷」も、新旧の雪が斑になっているのが解ります GWとは違って、この日は恵まれた天候 だから快適そうですね 雄山をバックに・・・GWには真っ白で、サッパリ解らなかった主稜線は、こんな眺めだったんですねぇ・・・ 一ノ越まで戻ったら、今度は立山三山縦走を経て一路、剱沢小屋を目指しました 2012年 5月20日 さぁっ、今日も行きますよ?剱岳まで!
2012年
やたらとハイパーな馬力のTさん 元気じゃないところを見たことがないくらい、元気なUさん 登ったら、サッサと降りる!(早月尾根との分岐から、下山方向を望む) だって帰るのは、左奥の剱沢を登り返したその向こう、中央の遠景にある室堂平なのだから「遠いですねぇ」 登るのが遠ければ、下るのも遠いのが剱岳 八峰こそ断念したものの、剱岳の山頂には、もちろん剱岳にはシッカリ登頂して、その日のうちに御前乗越しを越えて帰宅されました。 強いメンバーだからこそ選択できる、ロングトレイルです。 Tさん、Uさんと言えば、ミキヤツの限られた常連様うちでも(皆さんそこそこ強いのですが)最強メンバーと呼べる方々なのですが・・・ 「八峰だけよりも、コッチの方がずっと良かったかも♪」と、大満足のお二人でした。(コレだけしこたま歩けばね・・・) しかしこのコースを、再び八峰から変更だった女性のSさんを、TさんUさんを室堂まで送ったその足で迎えに行き、龍王岳から剱岳へと、更にもう一周した久野って・・・ 流石は、猛ダッシュで家の周りを駆け回る、KTの飼い主だわ・・・ (ちなみにわたくしは、小川山にて、世界をまたにかけるクライマーKちゃんと、アラフォーレディースでノホホ〜ンと遊んでおりましたが・み) 小屋を出る未明に、外にあった板は、GWに室堂周辺で見かけた道具とは、そのスペックが明らかに違う 板は最新の「ロッカー」システムが採用されたモデル もちろんビンディングもTLT ヨーロッパではレースに出る選手などを除けば、最早滑りを楽しむ人が大多数で、道具も移動手段と言うよりは、ここ数年で滑りそのものを楽しむものに変わってきています。 ところがGWの室堂周辺しか滑らないスキーヤーだと、古いツアータイプの板に、ビンディングもディアミールが中心で、どちらかといえば歩き系。こういった滑り系(軽量ビンディング故に、し っかりとした板を使える)の道具は、ほとんど見ることが出来ませんでした。 GWを外して、しかも剱沢まで越えてくるスキーヤーは、やはりコアなのですね〜
2009年 4月29日/5月3日・5月10日
夏の核心部「カニの縦這い横這い」の上部を行く(積雪期の核心部は前剱の下りです)
今シーズンは、映画「点の記」で注目度の高い剱岳。
室堂から見る立山稜線は既に雪が切れていて、GWとしては雪が多いとは言えませんが、かといって春先になっても降る雪で積雪はそこそこありました。
いつ何処から登っても困難を伴う剱岳ですが、夏の鎖トラバースが連続する箇所の多くは、春には雪壁のアップダウンとなって、残雪期のほうがむしろ登りやすい。
しかし、それでも雪山技術が必要という点では、その世界に飛び込む勇気をもって努力をした人にとっての話ですが。
今年の別山尾根メンバーは比較的高齢でした。
古希を迎えたお祝いに、禁煙してまで頑張ってきたIさんや、こちらも古希の70歳に手が届こうという久野の母。そしてヤッホーハウスからステップアップしてきたK&Bさんなど。
皆にとっての「憧れの剱岳」しかも「雪の剱岳」なのです。
左の写真:一日目:大日岳をバックに、別山乗越しへと向かう(雷鳥沢からの標高差は500b・舐めちゃいけません)
右の写真:別山乗越しを後に剱沢へ
やっと目にした岩と雪の殿堂「剱岳」に歓声が沸く
二日目:出発は3時起きの4時。
背後の剱沢が朝焼けに染まり始める。
前剱の雪壁を行く。傾斜は内容に見えますが、ここから最大40度ほど。
おそらく初めての人にとっては特にくだりでは、足がすくむ傾斜です。(雪山、夏山で傾斜が強いといっても一般的には30度あるかないかです)
前剣を登りきると漸く剣岳本峰が見えてきます。
でも、近付きそうで近付かない本峰です
そりゃぁ何度も下ってますから・・・
積雪期であれば、平蔵のコルから「カニの横這い縦這い」は巻いていける(既に巻き終わった上部です)
一日目の疲労もあるのでちょっと辛い
そんな時に現れる、癒しの雷鳥たち
残念ながら10日には上空に鷹やカラスが居たせいか、まったく姿を見せなかった
さぁ、お待ちかね!漸くクライマックスです
左:K&Bさん 赤岳敗退で一度は諦めかけた夢でした
右:佐々木ガイドとH&Mさん(この傍らで、久野母は嬉し涙に暮れてます・・・)
皆さん憧れの対象である「剱岳」のため、地道なトレーニングを積み重ねたからこそ立ち得た山頂です。
左:禁煙で心肺機能を飛躍的に回復させたIさんも山頂へ(※体重3キロ増加も何のその!)
右:「カニの縦這い横這い」を雪壁から巻く
※喫煙をやめると、2週間ほどで換気能力が10〜15パーセントほど向上し、消化吸収能力もアップするため体重が増えます。。
核心部である「前剱」の下りは、かなり長い雪壁です。慎重に!
下山後、余裕か、もしくは気合があれば、室堂の温泉まで、剱沢の登り返しもできます。
こちらは三日目に帰った10日組(精魂尽きてかなり辛そうです)
三日目の朝なので二日目の午後と違って雪面はカチコチに氷結してます
雪が緩んでいる場合に使う、踵を使ったステップの作り方
踵でキックステップすると、どうしても後傾(お尻が後ろにひけた状態)しがちになります。もし、踏み出した斜面が硬い場合、ステップを作りきれずに足(左足)がスリップします。
雪に慣れた方なら思い切って足を踏み出すことで、腰が引けずに状態が起きたまま踏み込むことが出来ますが、慣れるまではうえのような状態になりがちです。
そうなると、そのまま尻餅をついて、バランスを崩したり、滑落・・・の可能性が高くなります。
体を少し斜めにして降りると、スリップしても最大傾斜(真下)に足が向かないですし、後ろの足に重心を残しやすくなります。また、恐怖感も薄れるので、しっかりと後ろの足に重心を残し
つつ、しかも体を起こしてステップを作れるので、踵でのキックステップ時にも「斜め降り」はお勧めです。
登山の技術書やガイドブックには真っ直ぐ下を見て、と書いてありますが、現実的には斜めです。
<登り終えてからの皆さんの感想>
「雪の剱岳には、人の近付くことの出来ない神々しさを感じました」
「アルプスやヒマラヤのような素晴らしい世界を初めて知りました」
こういった感想が多いのを聞くと、私が初めてヒマラヤの頂に近付いた時のことを思い出します。私も、酸素の希薄な大気独特の空の濃紺、テントから一歩も出ることすらかなわない高地
での突風に、恐怖と畏敬の念を覚えました。山の違いこそあれ、あの時の私と皆さんの感じた剱岳への恐れと憧憬は同じものだったのでしょう。
この憧れへ向かっての努力こそが人を大きく動かします。
久野の母の努力は、階段の昇降に始まってスクワットや低山歩き、と実に地味な努力ではありましたが、その小さな積み重ねが「剣岳」という大きな山へと導いてくれました。
Iさんの禁煙は、それが長年吸っていただけにかなり苦しいものだったようですが、その苦しんだだけの甲斐は間違いなくありました。
皆さんご自分の努力の成果です。
おめでとうございます!
そして・・・お疲れ様でした。
山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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