八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。国際山岳ガイド連盟・日本山岳ガイド協会所属
2011年5月4日(祝)
事前に続いた長く不安定な天候、それによってもたらされた不安定な雪、2011年のGWは決して条件の良くないスタートでした。
日本海側の雪が危険な状況にあると判断した私達は、北アルプスへの入山を諦め、その晴天率の高さで積雪が安定し、かつこの時期としては豊富な残雪に恵まれた八ヶ岳の東面へ転戦
しました。
入山日の4日にも、すれ違ったガイドパーティー曰く、「昨日になって、ようやく登ることが出来た」という剱岳。
山小屋のブログによれば、GW前半は小屋から出ることさえ困難な状況だったらしい。
この日の源治郎尾根から歩く剱岳には、アプローチの剱沢からその爪痕がそこかしこに見え、数日前に凍死者さえ出した春の嵐の恐ろしさを、生々しく伝えていた。
源治郎尾根を行く(後方の剱沢には、凄まじい雪崩のデブリが、大河の如く流れ下っている)
午前3時半、剣山荘を発つ(例年と違い、他のパーティーは一組のみ)
まずは闇の中、硬い斜面を剱沢の底まで下っていく
平蔵谷出合いは、巨大なデブリが剱沢の幅一杯を埋め尽くし、巻けないので横断する
最初の急登は延々続くが、気温の高かった前日のパーティーによる踏み跡が、大きな助けとなってくれる
日が登り始めた
先発したNガイドパーティーと合流
これまでになく多い雪によって岩場も出ていない
例年より低めの気温に雪も硬く、実にスピーディーな登攀が続けられる
登るほどに視界が広がる
周囲の山も、どんどん見えてくる
だからといって、常に笑顔でいられるのは、実に前向き(結構な急登が続くのです)
これから懸垂下降するはずの源治郎尾根2峰の影が、平蔵谷の対岸に映っている
剱沢の天場を眼下にしながら、頂上を目指す
両側に切れ落ちた1峰のクライムダウンを終えた
一息つきながら2峰を目指す
懸垂下降では、まだ初めての人も居て、皆さん神妙な顔つき。
でもやってみれば難しいことではなく、クライムダウンの方が恐ろしいことだと気付くでしょう。
源治郎尾根の最後の一登りは、朝からから標高差千bを登ってきたこと、居る標高そのものも高いのだから苦しい。
けれども晴天で、その青空に向かって登る瞬間は、やっぱりすがすがしいものだ。
山頂では、早月尾根からのガイドパーティーに会う。
早月パーティーと再び別れ、別山尾根へ。
この下山こそが、剱岳の核心とも言える
蟹の縦這い横這いは、アイゼンなら雪さえ繋がっていれば、巻いた方が安全でかつスピーディーだ
この巨大な破断面が、平蔵谷を駆け下り、更には真砂沢のあたりまで流れたかと思うと
月並みだが、自然の驚異と言う他はない
巨大な雪キノコに比べれば、人間は小さく無力だ
条件次第では平蔵谷を下ることもあるが、今年はとてもじゃないが、この谷底に足を踏み入れる気にはならない
別山尾根から見た破断面と剱岳山頂
すっぱりと刻まれたライン
登頂がスピーディだったので、まだ8時くらいだったけれど
山頂では滑降準備をしているTガイドパーティーが
山頂からの全員の無事なスタートを確認してから、のんびりと下る。
どちらかといえば人ごとなのに、遠く緊張感の伝わるこの滑降を見ていた時の方が、全行程を通した一番の冷や汗ものでした。
下りの最大核心部である、前剱の急斜面を終えて
小屋に戻ったのは、まだ10時頃。
皆さんそのまま荷造りし、別山乗越しを越えて雷鳥沢のテントへスキーで帰る人、そのまま室堂を目指し下山する人、それぞれの帰途に着かれました。
GWの源治郎尾根(過去の記録)
<左から二つ目のピークが頂上。そこから右下に降りているスカイラインが源治郎尾根。2つの岩コブが、左がU峰、右が1峰です>
毎年恒例の、ゴールデンウィークの剱岳、源治郎尾根に行ってきました。
1日目は剱沢までの別山乗越越えの、3時間の行程です。今回はスキーを利用してのアプローチにしましたが、これはやっぱり大正解。2日目の登攀のために登山靴を背負う苦労もあり
ますが、やはりスキーは楽しい!
2日目は2時30分起床、3時30分出発。30分もすれば明るくなってきますが、今回宿泊した剣山荘からはダイレクトに剱沢に降りようとするとなかなか怖いので注意が必要です。
平蔵谷出合の少し上の安全な場所で登攀具を身に付けてスタート。時間は4時50分頃でしょうか。
ルートは剱尾根末端から比較的広い顕著なルンゼを登っていきます。雪が締まっていて気持ちよい登高が続きますが、このルンゼだけで、高低差の1/3を登るため、ゆっくり登っていかな
いとあとで疲れが出てしまいます。穏やかに、穏やかに登りましょう。
ルンゼを抜けるとハイ松と岩が出てきますが、出来るだけ雪を繋いで上っていった方が登りやすいです。
T峰まではそれほど難しいところもなく到着します。
T峰の頂稜は狭いナイフリッジになっていて緊張します。でも、そこからU峰とのコルまでの下降の方がもっと緊張するでしょう。
U峰の登りも1峰と同様、出来るだけ雪を繋いで登ると登りやすくなります。ただ、出だしはハイ松と岩を登りました。
U峰の頂稜もやっぱりナイフリッジ。でも、朝早く出発したので、まだまだ雪も硬く、快適でした。もし雪が柔らかくなっていたら、高度感を楽しむ余裕など無かったかもしれません。
U峰の懸垂下降は30b。今回は60bロープなので、簡単でした。夏もこれで行けそうです。今回お父さんと一緒に参加した、小学5年生の男の子。懸垂下降も全く問題なしでした。
U峰の下降を終えれば、あとは頂上まで1時間もかからない、稜線漫歩? でも疲れていれば、けっこうきつい登りです。景色を楽しみながらゆっくり登りましょう。危険はないので、一生
懸命になる必要はありません。
剱の頂上は以外に広く、雪が着くと更に丸くなってしまいます。
日本で一番尖っている山は・・・
一番:尖り山 二番:槍ヶ岳 三番:剱岳 というのに納得です。ちなみに尖り山はピラミッドだとか、宇宙人が作ったとか言う噂のある山です。
下降はカニの横バイまでは別山尾根を行きます。ゴールデンウィークの頃ならカニの横バイは、面倒ですが直前でアイゼン、手袋を外すと楽です。ただし暖かい時に限ります。
カニの横ばいからの一連の悪場を終えると平蔵のコルです。このころなら平蔵谷を降りるのが簡単です。ただし、剱沢での登り返しもあるので、どっちが良いでしょうか。今回は子供用ソリ
を持ってきたのでみんなで尻セードをしました。ハッキリ言って暴走族です。でも楽しいです。
天候に恵まれて、剱岳は快適に登ることができました。
3日目は風が強く、少し曇っていましたが、やはりスキーは楽しかったです。スキーを持っていなかった参加者はやはりソリで尻セードで楽しんだようです。
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