八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。


 山岳ガイド ミキヤツ登山教室の山行記録 ポワントラシュナル&コスミク縦走       

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6月18日(金)
 やっと天候の回復の兆しが見えたこの日、朝一のウェブサイトで3800mを越えるミディの駅からのライヴカメラをチェックしたら、そこには快晴の山々が!シャモニの街は雲の下で暗いま
まなので、4000b級の山々が晴れているのかどうかは、街に居るだけでは解りません。


「バレイ・ブランシュ」文字通り「白い(だけの?)谷」を行く
「タキュル・トライアングル」を右手に望み、タキュル東壁の手前にあるはずの「ポワント・ラシュナル」を目指す


 朝2本目くらいの便は日本人観光客で一杯でした。中にはこちらでプロのスキー教師として活躍する、シャモニ在住のAちゃんも案内役で居て、久々に話が出来ました。最近のシャモニに
は、彼女のように現地のフランス人と結婚して永住する、若い世代の日本人女性が何人も見られます。その中のお一人曰く、フランスはもともと親日派が多く、ヨーロッパ圏の中では割と住
みやすいのだそうです。

 もともと日本人女性に対する外国人の観念は、内助の功や、何にでも素直で、よく働く。といったイメージが強いようですが、少なくとも私に関しては、全く標準的日本人女性として、桁外
れにイメージを壊してしまうタイプなのでしょうね・・・

 さて、ミディのケーブルは中間駅まで上がっても真っ白な霧の中。観光客の皆さんも一様にカメラを提げたまま不安そう。

 けれど上のケーブルが3000mを越えた頃、新雪を纏ったばかりのミディ東壁が姿を現し、次いで雲海の上に、「ヴェルト」や「モンテ・ロザ」、「グランド・ジョラス」の浮かぶ姿が見えると、
ケーブル内は大きな拍手と歓声に沸きました。


ミディの下りから望む「グランド・ジョラス」と「ダンディ・ジュアン」

 雪を踏みしめて歩くのは久々ですが、深く積もった新雪は、歩くよりむしろスキーに適していて、登るよりは下ってしまいたくなるのですが、この長雨で土砂崩れが起き、氷河下部にあるモ
ンタンベールの列車は運休中。ミディ〜プランの縦走さえ出来ません


降雪直後でも「ミディ南壁」には雪が無く、「これならクラインミングジューズを持ってくるんだった・・・」と、ガッカリ


「おっとっと、高山病かしらん?」周囲の壁からは雪崩の音が頻繁に轟き、雪が落ちるまではルートの選択肢も僅かしかない

 今回はとりあえず高所順応のために上がって来たので、ポワントラシュナル縦走に向かってみる。
 一回券だとミディ往復は40ユーロ以上とかなり高価になるが、夏はマルチパスを買えば日帰りの往復は13ユーロくらいで済むのだ。今回は研修でも使うため、連続利用ではない15日
間パスを購入した。

 このマルチパス、スケジュールと使い方次第で色々あるので、観光協会のベルナデットさんの日本語案内コーナーへ行って教えて貰うと良いだろう。シャモニ観光で宿泊費に次いで費用
の大きなウェイトを占めるのは、この乗り物代となるはずです。(ちなみに春はスキーパスと同じになるので、マルチパスも余りお得だとは言えない)


「ポワント・ラシュナル」から、タキュル東壁「ジェルバズッチ・ピラー」を望む

 さて、行くところがないのは皆同じと見えて、霧が晴れてくると目の前の「ポワント・ラシュナル」には、スペイン山岳部隊?の迷彩服アーミー軍団が群れていて、更に後ろからも続々とガイ
ドパーティーがやってくるではないですか。

 しかもこのアーミー軍団、歩くのも登るのも、そして下るのも、やることなすこと全てが遅い!「こんなんで良いのか?スペイン軍!?」と、思わず久野とハモってしまいそうなノンビリさで、
ポワントラシュナル3つの頂の縦走中、2つ目のピークからの懸垂下降で団子になって溜まってしまった。

 しばらくはアーミー兄ちゃんと一緒に、寄ってきた山カラスを相手に待ってみたが、そんなに待ってまでも登る程度の場所でも無いので、2峰からもと来たトレースを引き返すことにした。
 今度は次々にやってくるガイドパーティー達とすれ違う。モンブラン登山が目的のお客さん辺りだと、クライミングが出来る訳でもなく、この縦走くらいしか今の条件で来られる場所は無いの
だろう。それこそ10パーティー以上とすれちがっただろうか?

 数多くいる山岳ガイドの中でも売れっ子ガイドは仕事もある程度選べるようだが、そうは売れていないガイドにとってのモンブラン登山は貴重なドル箱であるはず。皆が皆ではないだろうけ
れど、こんな条件の中、例えモンブランへは行けなくとも、働かなければ彼らも生きてはいけないのだろう。

 こうして見てみると、国立登山学校の厳しい審査を経たこちらのガイドとはいえ、多種多様で興味深い。
 如何にもガイド然とした、スマートな身のこなしの人も居るかと思えば、お客の女性には背を向けてもこちらに向かっては平気でジッパー下ろす下品な奴、ミディーの急峻な下りだしからロ
ープはずっと緩みっぱなしのとてもガイドとは思えないが、ちゃんとUIAGMのガイド証付けた奴、お客が息切れてるのは兎も角としてガイドも息切れしてる腹の出たオッチャン等々・・・

 まぁ、職業的にも数だけは一杯居るようですから。

 午後に予定していたコスミク稜にも少し早そうだし、こちらにも10人くらいの団体様が見えたので、とりあえずは小屋の下でクレバスレスキューの練習を始める。

 とりあえずで始めたこの練習、これまでは硬い氷の上でやっていたけれど、柔らかい雪はまた勝手が違っており、とりあえずどころでは無くなってきた。
 仕事のショートロープと同じだから、スキー研修で板を履いていたときとは違って、アイゼンさえ履いていれば落ちたのを瞬間に止めることは問題ない。だがそこから、クレバスに垂直に落
ちたのと柔らかい雪の斜面のそれが同じ状態になるよう、久野が力一杯引いてくれるお陰で、私がどれだけ渾身の力で踏ん張り続けても、度々支点構築中や構築しても過重を移す前に、
引きずられては落ちていくことを繰り返す。

 が、「体の小さい人間でも、どんな雪質や条件でも、耐えられる体勢があるはずだ。それが出来るようになるまで、今此処でやっておかなくちゃ駄目だ」という久野の厳しいお達しからは、
休みたかろうが泣こうが、許しては貰えない。

 何とか耐えられる体勢が決まりだしたのは、始めてから4時間も経った頃だろうか。時既に15:40。周囲の登山者達は駅へ登り返し始めていた。

 「もう帰ろう」と言われても、半場ヤケになった私はコスミク稜へ向かう。「独りでもいいや」と思ったが、この時途中にラペルのあることはすっかり頭から消えていた。行きは私が持ってきた
ロープだが、この時にはもう自分のザックの中には無かったのに。

 周りは吹雪になってきて視界は利かない。稜の上に出た頃、久野が追いついてきてロープを渡し結ぶように言う。こうなったら仕方ないとは思っていたけれど、間に合わなければ3800m
の駅で着の身着のままのビヴァーグか、コスミク小屋に降りるしか無い。

 こんなに時間に追われる予定でも無かったので、カムは2個だけ。中間支点をその2個で取りながら、どうしても支点が必要になったところで交代。新雪に埋まった残置支点を捜している
時間もスタカットで切る時間も、全てが惜しいから、同時確保でスピードを上げて行く。

 オマケに足腰には力が入らず、ハイステップに乗り込もうとすると充分に乗れずに体がずり落ちて、ハッとする時がある。

 
先行パーティーが越えるのに手間取っていた箇所を、順番待ちしてから越える

 こうして急ぐうちに、まったく見えていなかった先行パーティーに追い付いてしまった。核心部の岩登りに手こずっている。抜くことも出来ずに待つが、その間にも最終ケーブルの館内放送
が響いてくる。駅はもうすぐ近くらしいのに、視界がないのであとどれだけあるのか解らない。

 岩を登って狭いルンゼを抜けたリッジ上に立つと、そこにはもう駅のテラスによじ上がる処だった先行パーティーが居た。ミディー駅のスタッフも一緒に覗き込んでいて、「まだ後ろに人はい
るの?」と訊いてきたので、私達が最後であることを告げる。
 
 こういったことは日常茶飯事だから、駅のスタッフも慣れたもの。私達も正規の道を駅に向かって他の人と必死に登って駅の待合いにいたら、まだ後からアイゼンもロープも付けたそのま
まに駆け込んでくる人が居た。なんてことはよくあることだ。

 私達は17:30の最終ケーブルを待つ間に片付けを済ませ、ケーブル内でずっと歌を歌う、妙なラテン系観光客の一団に混ざって下った。コスミク稜の先行パーティーはまだ片づかなかっ
たらしく乗ってこなかったので、更に次のスタッフと一緒の営業終了ケーブルに乗せられたのだろう。

 このあとのケーブル内、そして部屋に戻ってからも、眠れぬほどの激しい腰痛に見舞われたのは、やはりコスミク程度であるはずがない。あの、クレバスレスキューのせいだろう。
 そして、ならば、この「引き運動」がこんなにも足腰にくるのであれば、足腰の鍛錬としては申し分無かろう。小淵沢でタイヤを引いて廻ったら別荘地の不整地だし、良いトレーニングになる
のかも・・・でも、同時に近所の有名人にもなりそうな・・・

 なんて、どうでも良さそうな心配までしてしまうのは、やっぱり私だけ?なのだろうか。


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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
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