八ヶ岳、小淵沢に住む山岳ガイド、加藤美樹・久野弘龍が、ヨーロッパ・シャモニやドロミテ、国内の雪山、冬山、バックカントリースキー、夏山、登山・クライミング教室、ガイドを行っていま
す。


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 「近頃、若い人が山に増えてきた?」と思っていたら、男性ばかりではなく、これまでは珍しかった若い女性の姿が、急に増えてきました。
 登山はスポーツの一環です。活動的な女性が社会に増えれば、その活動の場が山に広がってきたって不思議なこともありません。けれど山が他のスポーツと違うのは、それが自然を相
手にしているという点でしょう。自分の判断能力が、直接自らの命と関わってくる場所が山なのです。

 そこでこのページでは、これから山歩きを始める女性はもちろん、これまで登ってきた女性にも役立つ知識、また男性でもこれは面白いかも?という山登りに関わる道具なども紹介してい
きたいと思います。
 
 山で登山者を見ていると、「ああすればもっと楽なのに」「あれって危ないけれど、知らないんだろうなぁ」なんてことが沢山あります。
 山の道具自体も高価なのに、せっかくの高価な道具の機能を発揮させることもなく、またTPOに合った使い方が出来ていない人も大勢見かけます。奮発して買うものだからこそ、しっかり
使いこなしたいものですね。


カラフルなウェアは、山での足取りも軽くしてくれます

※山での歩行技術などはこのページで→http://mikiyatsu.web.infoseek.co.jp/page058.html


クライミングシューズ  さて一足目は何を買う?

 クライミングシューズは、つい痛くて大きめを購入してしまいますが、一足目はせめて自分の普段履きの靴と同じサイズの物を買いましょう。例え痛くとも、シューズを履くのはクライミング
中のみで、確保の間は履く必要はありません。
 また、長く履けば履くほど緩んで大きくなるため、大きめを買いすぎると後で使えなくなってしまいます。それでもその靴は、履きっぱなしに出来るよう、山で使うことは出来ます。また、クラ
ッククライミングであれば小さすぎると、足をクラックにねじ込むのでこれまた痛い。

 ただし細かい立ち込みは靴の中で足がずれてしまうため、ゲレンデでの細かな足場には乗ることが出来ず、2足目を買うことになります。ゲレンデで使うシューズは、爪先が中で握り込ん
だ状態になるくらいのサイズがベストです。

 最近は女性バージョンの製品を出すメーカーも増えてきました。これらは同じ製品名であっても、W,sは、より少ない体重でフリクションが効くように、ソールが薄かったり、全体の剛性を下
げてあるため、一般には男女共用モデルよりも足裏感覚が良くなります。
 クライマーの中には、この足裏感覚を好んだり、体重が軽めだったりで、男性でもW,sモデルの愛用者が居たりします。逆に体格の良い人には、剛性がなくて柔らかすぎるようです。


ソールのフリクションはファイブ・テンが良いが、足形が細く履く人を選ぶ
(画像の物はもう廃盤だが、ファイブテンとしては足入れも良く履きやすかった←カモシカがらくた市で購入4千円くらい?実は勝負靴の一足)


ジムなどで買えるエボルブ
画像はポンタス。足入れ良好で履きやすく、値段もお手頃(ソールは今ひとつだが、他が2万円位するのに対し、1万2,3千円で買える)

さて、メーカーは何処を選ぶか?
 ハッキリ言って一足目はバーゲン物で充分!つまりは誰もが買い直すので、張り切って買うと勿体ないのです。店で投げ売りにされているものでも、初心者ルートは登れます。ただし爪先
で立ち込んでも、五指が反り返ってしまうほどのブカブカは不可です。

 二足目は慎重に選びましょう。ここで更に失敗しては、「山用」ばかりが増えていきます。変に爪先にソリが無く(ダウン・トゥーやターン・インしていないもの)、スタンダードな型で、指がしっ
かり曲がって収まるサイズ選びをしましょう。(手の指で爪先を押しても、押す余地のないくらいに足指がしっかり握り込まれたまま収まったもの)

 女性だと、スポルティバであればミウラー・ウーマンなど。
  男女ともにお勧めは、近年スポルティバの性能をそのままに、安価で買えるスカルパの新製品各種が良いでしょう。エボルブと同じくらいの値段設定です(スカルパでも、昔のモデルは足
形が特殊で痛いです)

 買ってしまってからも、履けないほどに痛ければ、入浴の際にリンスを溶かしたバケツに漬けてから、しばらく履き、足形が付いたら、またバケツに戻して一晩漬け置き、それから乾かして
みましょう。


ちなみに2010年シーズンの私の愛用品は・・

ゲレンデのスラブなら小さいファイブ・テン/モカシム・レースアップや上記画像のもの(EU34〜35)
山ならジャストサイズのポンタスかミウラー・ウーマン(ゲレンデ用より3サイズ近く大きいが、運動靴と同じ22,5pか23pのEU37)
そしてゲレンデのどっかかぶり系勝負靴は、やはり小さいスポルティバ(ミウラーかテスタ・ロッサ)。ただし5.12台のルートでも、ルート次第では大きめのミウラー・ウーマンを使います。



雪山の暖かワンポイント  小物や、ちょっとした工夫で暖かさUP!

女性の冷えは、足下から来ます!

 冬山の小屋やテント場で、よく見かけるのはダウンシューズ。確かに暖かいですが、嵩張って荷物になる上に、お値段もそこそこ。だったら足の先を温めるのではなく、足首を温めてみま
せんか?
 登山では行動中だと、厳冬期でも意外に発汗量があり、靴の中が湿るのは凍傷に繋がります。ですから行動時のウェアは嵩張らず動きやすいものが良いですが、テントの中や小屋で爪
先を冷やしてしまうと、今度は容易に寝付けません。レッグウォーマーは、汗で湿ってしまった靴下を乾かす間にも活躍してくれます。


ちなみに、このレッグウォーマーは「しまむら」で購入(種類も豊富に売ってます)


 これも行動中にはお勧めできませんが、腹巻きや、お腹や腰にホッカイロを使うと、寒い小屋やテントの中でも自分の体温を奪われず、体力を温存出来ます。冷えは、それだけで体力の
消耗を招きます。

 行動中の体温調整は、帽子やネックウォーマーで。これらは歩きながらでも着脱が容易です。大汗掻きながらストールやネックウォーマーをしていたり、帽子を被ったままなのはナンセン
ス。血流が集まる場所である首や頭の露出は、寒い時の保温に役立ち、また放熱にも適しています。

 だから襟無しの服を重ねるよりは襟付きの服を一枚着る。それも手袋でも扱えるように、ボタンではなくジッパーのものを着用して、首筋に容易に風を入れられるようにする。などすれば、
行動中も荷物を下ろすことなく、体温調整が可能となります。
 下半身は着込みすぎると行動中には脱ぎ着できないため、重ねすぎないように。それでも暑くなったら、サイドジッパーなどのベンチレーションを全開に。ただし稜線に出る前にはしっかり
閉めましょう。(私はよく忘れて、「今日はヤケに寒いなぁ」と気が付きます)


 冬山の寒さはハードな行動の間には感じませんが、一旦その行動を止めると凄まじい寒気に襲われるもの。出来るだけ長く立ち止まらないように、使いやすい物はすぐ出せるようなパッ
キングも重要になります。

 また、指先が冷えやすい人は同じように血流が束ねられている手首を露出しないこと。手袋と袖口はしっかり重ね合わせ、風の吹き込む隙を無くしましょう。暖かさばかりを優先するので
はなく、道具が扱いやすい手袋を選ぶことも肝心です。それで犠牲にする暖かさは、TPOに合わせて5本指のオーバー手袋の上に、3本指を重ねるなどの工夫をしましょう。(このあたり、
私はもちろん、アラスカやヒマラヤを舞台に活躍する谷口ケイちゃんなんかもやってます)

 顔も同じく、雪山では露出部は無くすこと。意外にメイクで隠れていて、凍傷に気づかなかった。なんてこともあるのです。眼鏡の金属部は凍傷に繋がり、またレンズが曇れば瞬く間に凍り
付くので視界が閉ざされてしまいます。眼鏡無しには行動できない視力の人は、コンタクトレンズを利用しましょう。


朝晴れていても一旦荒れ出せば、風と低温で、みるみる体感温度が下がっていきます

 雪山では、「ゆっくり行けば歩けるから」という人だと、例え仲間と一緒であっても、稜線に向かうべきではありません。例えば夏山で、吹き曝しの暴風雨の稜線へ「ゆっくり行けば歩けるか
ら」と、向かう人はいないはず。
 アイゼンワークが何とかなる程度、だとか、手袋で道具が扱えない、といった登山者は=山での行動時間が長くなるということになります。
 なぜゆっくりだといけないのか?それは雪の八ヶ岳で大多数を占める遭難が、低体温症によるものだからです。

 内陸部で積雪量が少なく入山の容易な八ヶ岳ですが、それと同時に、内陸部の寒気の厳しさや独立峰としての風の強さは凄まじく、その吹き曝しの稜線で、「体が動かなくなって同行者
が救助を求める」、または「単独で行動不能に陥り、通りかかった人が救助を呼ぶ」といったケースが後を絶ちません。これらはなにも、体力不足や装備不足のみに関わらず、技術不足によ
って起こる事態が多く、行動中の一つ一つの動きが遅ければ、当然ながら稜線で風に晒され、体温の奪われる時間が長くなることを意味するのです。

 自分でも気が付かないうちに意識が遠のき、手足からやがて体そのものが動かせなくなる恐ろしい低体温症。これまでに運良く搬送が進み、助かったケースもあれば、その場所や時刻
によって命を亡くされた方も少なくありません。

 速く歩けるように体力を付けるのは簡単ではありませんが、購入してきたアイゼンやスパッツを、自宅で手袋で扱う練習もする。といった、用意の周到さも、スピードと安全に繋がります。こ
の程度のことは決して難しいことではありません。

 よく山ではスパッツを左右逆に着けていたり、酷いとアイゼンを前後逆に(←左右ではありません)着けて、「バンドが締まらない」と騒いでいるご婦人も居たりする。
 颯爽と山で動き、装備を使いこなす姿は格好いいもの。白鳥は、水上ではあくまで優雅に、けれど水面下ではせっせと水を掻いているものなのです・・・

 隠れた努力で、格好良く、そして余裕のある登山を楽しみましょう。




暖かウェア この冬お勧めの



写真はパタゴニアから、2009年秋発売した「ナノパフ・プルオーバー」
http://www.patagonia.com

 一般的には、こういった化繊ロフトのものだと、ゴワゴワ感や嵩張りが気になる人も多いはず。でもこのプルオーバーはとにかく軽い。フルジッパーとはいえ、同じような利用法のダウンセ
ーターより更に100c近くも軽いのだから驚異的です。
 もちろん暖かさはダウンセーターの方がやや勝るものの、普通に洗濯しても乾きやすく、そして乾いたらそのまま使えてしまうという便利さも実に良い。私は発売前のテスターを戴いてとて
も気に入り、更にグリーンオアシスも購入しました。右の男性モデル(オレンジ)とは、何気にステッチパターンが変えてあるのも心憎い演出です。(先日若い女の子から聞いた話によれば、
横ステッチはモコモコ=太って見える?ようで女性には嫌われる傾向らしい。ミシュラン君みたいだから?)

 
 この他、やはりパタゴニアから「ダウンセーター・フルジップフーディー」が出ました。こちらはヘルメットの上からでもガバッとかぶれるフード付き。八ヶ岳などの内陸地域、乾いた雪であれ
ば、確保中などアウターの上から羽織ってしまうのも一つの手でしょう。あくまでダウンなので、上信越などのベタ雪の場合は、アウターの下に着てくださいね。ロフトが分厚くないので、イン
ナーダウンとして初めからフード無しの製品も選択できます。
 ナノパフ、ダウンセーター、いずれも注意したいのは、透湿性のある素材ではないので、もしアウターがソフトシェルである場合に中間着として使うと、折角のアウターの透湿性を殺してしま
うことになります。ソフトシェル素材のアウターには、フリース素材などの内部の熱や湿気を出してくれるものを利用すると、汗かきの人には快適でしょう。


  後は積極的に雪山に入りたい人にお勧めなのが、パタゴニア「R1フーディー」
 こちらはメンズのみの発売です。女性にはXSで腰が長めですが、それがまた暖かくて充分使えます。襟と眼出し帽が一対となったようなデザインは、街着としてはチョット・・・といったデザ
インながら、眼出し帽を個別に使うより首筋に風が吹き込まない分体温が奪われず、断然暖かいですよ。前述のようなソフトシェル素材のインナーとして使うにも、R2ジャケットなどよりもむし
ろゴワつきが押さえられ、動きやすくなります。
 ただ裏地パネルの目が大きいので、寒がりの人には目の細かい肌着を(私はメリノ4やキャプリーン4を利用)もう一枚下に重ねたいですね。
 
 ウェアではないですが、ネックウォーマーや帽子も、行動中に手軽な体温調整が出来るので、寒がりの人には大切なアイテムです。ウェアは高価で色々買えなくても、こういった小物のカ
ラーリングやデザインを変えて、山行時のオシャレを楽しんでみましょう。


 
この他随時更新していきます。。。




ザックは背面長に合っていますか?



いずれもオスプレー  左/ミュータント    右/バリアント

 小柄な女性に多い問題で、なかなか良いザックが無いという話を聞きます。実際に身長が155aに満たない小柄な私も、ザック選びには苦心します。これも靴と同じに言えることですが、
手で持った重さではなく、フィット感のあるものが軽く感じ、また軽くてもインナーフレームの華奢なものなどはパッキング次第、荷物の少ない時には逆に荷崩れして重く感じることもあり得ま
す。

 最も大切なのは背面長。幅広いサイズ展開をしているメーカーから選ぶべきでしょう。モンベルやオスプレーといったメーカーがショート丈の背面長も扱っています。SM、MLなどといった、
大まかなサイズ展開では、小柄な人にはまずフィットしません。

 実際に重量のある荷物を入れたザックを背負ってみて、肩にかかるストラップが点でなく、カーブを描いて面で肩にフィットするかどうかが、背面長が合っているかどうかのポイントとなるで
しょう。この際、ウェストベルトは腰のくびれではなく、もう少し下の腰骨で受け止めるよう調整してください。

 登山道具の多くは輸入物なので、私たちの場合は現地ヨーロッパで購入して来ることが多いのですが、ザックだけは大柄なヨーロッパ人の仕様だと合うものが売っておらず、買ったことは
ありません。

 ちなみに、背面が直接背中に接しなくて涼しいという謳い文句のザック(オスプレーでもシリーズ化されてますが)、これは背面の空間を作るためにザックの内容量を犠牲にしていると思っ
てください。表示のリッター表示よりは入らないと理解した上で、購入すると良いでしょう。
 内容量の表示もメーカーによってまちまちです。一般には細いザックは表示より荷物が入らず、幅広ザックは表示より意外に荷物が入ります。

 私の場合は現在中心に使っているのがオスプレー。今は廃盤モデルの40gと「バリアント52」(サイズSは49g)を使っていますが、あくまで仕事用なので、一般女性は50g以上のザ
ックを買って荷物を詰め込めば、山の楽しさを犠牲にしてしまうほどの重量になってしまいます。
 テント山行する人以外には、もっと少ない容量のザックが良いでしょう。背負うバランス上、50gを越えれば、ザックの自重は極端に重くなります。ポケットが多かったり、中で二気室に分
かれたものなどは、その分重量も重くなるので、体力を付けて「利便性=重さ」を取るか、体力がないのであればより軽量化の方を重視すべきでしょう。

 ザックの場合「大は小を兼ねる」には当てはまりません。これは大きなザックに僅かな荷物だとパッキングが上手くいかず、歩行時のバランスが悪くなったり、また大きなザックでは何でも
入ってしまうので、余分な装備、その山行には必要ないと思われる装備を、削ぎ落としていくことが苦手となり、準備段階での「山行目的に合わせた装備を選ぶ」といったステップを放棄す
ることになりかねません
 登山は装備を選ぶ段階から、既にその山行が始まっています。何の考えも無しに、毎回同じ装備を持ち出していたのでは、登山の経験を積んでいるとは言い難いでしょう。

 ちなみにこのバリアント、登攀仕様ですがそれだけにこのクラスとしては軽い作りになっており、テント山行向けに軽いものを求める人には良いでしょう。ちょっと色が強烈ですが・・・・登攀
時には必要ない雨蓋や、ハーネスと重なる腰のストラップが着脱可能であり、必要に応じた軽量化が可能です。

 最近購入し今期デビューの上の写真「ミュータント38g」もSサイズがあり、一般的な冬山登山に適した容量でかつ軽量。シンプルな作りながらビバーグマットも内蔵しており、今年の冬
が楽しみです。

 
蓮華岳にて(オスプレー・スウィッチ26)            黒部五郎岳にて

 ちなみに小さ目サイズは、パタゴニアとモンベルのそれぞれ40gくらい。どちらももう既に廃盤ですがSサイズを使っています。
 山スキーには「スウィッチ26」(サイズSは23g)これ以上の大きさは背面パネルからアクセスできないので、スウィッチでは中型です。板を担いだままジッパーで内部にアクセスでき、板
を担いでも安定性がある。背骨をしっかり守ってくれる背面パッドです。なお、今期からスウィッチはモデルチェンジしています。
http://www.lostarrow.co.jp/products/BackPacks.html

 これまで背面長の合っていない、肩とお尻で重みを受け止めて歩いていた人にとって、腰で重みを受け止められるショート丈で荷物を背負った時の軽さは画期的です。荷物は多くないの
に肩が凝る?という女性の皆さん、肩こりは、仕事の時だけにしたいものですね。

 国産メーカーではモンベルの他に、アライテントがシンプルで素朴な物作りをしていて、小さなサイズ展開もしています。カラーリングやデザインはクラッシックながら、他に使っている人が
少ないという点では個性的かも知れません。



 肌着は何を着ていますか? 基本的なウェア選び


 山では気象の変化はもちろん、その風や標高によって、汗まみれの暑さから急激に体感温度が下がることがよくあります。これを防ぐには、まず体を濡らさないことです。体温が低下し続
けると、人間は最後まで生きるための機能を維持するため、トカゲと似たような原理で末端の血流を切り捨ててしまいます。つまり手足が動かなくなり、自分の体を自分の意志で動かすこと
が出来なくなります。最後には心臓も止まってしまうわけですが、これが「低体温症」と言われるものです。
 「低体温症」は冬だけに限らず、気象変化の激しい山では夏でもみられる死亡事故の要因となっています。
 最近では、北海道トウムラシでの大量遭難が、「低体温症」の代表的な例に挙げられるでしょう。

 長いアプローチで汗だくになり、稜線や頂上に出た時に受ける風は心地良いものですが、少し休むと今度は一気に冷えてきます。濡れた体で山小屋に入った時も同じですが、湿った服で
は行動を止めた途端に寒さを覚えるものです。
 
 着替えは一杯持っていきたい。でも女性だから持てる荷物には限界があります。一泊の登山ともなれば、着替え以外にも、持っていかなければいけないとガイドブックに載っている道具は
他にも沢山、化粧ポーチだって重くても欠かせないアイテムでしょうか?
 けれど山での快適性を追求したばかりに、バテてフラフラになったり、山頂に着けなかったり、また下山時には疲れが事故を招くことにもなりかねません。そもそも自重自体が軽い女性
が、重い荷物を持つこと自体が大きな負担となるはずです。この負担は自分が思っている以上に、山では遙かに大きなものなのです。

 そこでお勧めなのが速乾性素材の肌着。これらは山では当たり前。逆に体を冷やすための素材である綿を山で肌着に使うことは、いくらでも着替えの運べる強者のみが許されることでし
ょう。
 
 国産メーカーから出ている「ファイントラック」は、これだけ単体で着るにはセクシー過ぎる、ネット状の肌着ですが、これを一枚シャツの下着るだけで素早く汗を吸収して戻さない。つまり肌
は常にサラサラを保てます。重ね着は暑いような気もしますが、薄くて軽量なので気になりません。むしろ汗かきの人にはお勧めのアイテムといえるでしょう。
 ちなみに私は春のスキー登山で汗をかいて3千bの稜線に立った際、ファイントレックを着ていた上半身は暖かな一方、一般的な機能性素材の下着を着けていた下半身は汗の濡れで一
気に冷えてしまいました。女性に下半身の冷えは禁物、女性独自の臓器は冷やすことで、体に様々な弊害を及ぼします。
 ちなみにシャツ以外にも、ファイントラックではちゃんとパンツ、スパッツやブラといった女性用肌着、また男性用肌着も発売しているようです。
http://www.finetrack.com/

 
でも「ファイントラック」単体では・・透けます        白馬の金山沢にて(紫外線の強い時期には日差しだけでも疲労します)

 体を濡らさず、体感温度の差が無くなれば、体の負担が軽減され、未然に消耗も防ぐことが出来ます。
 また上着を着たり脱いだりといった行動の中断も減るので、行動時間の短縮にも繋がるでしょう。決して「速く歩く」のではなく、視点を変えて他のことで所要時間を減らせば、苦しまずに余
裕を持った登山が楽しめるようになるはずです。

 また日帰り以上の山行には、着替えはどうしても増えてしまいがちです。こういった時に、冬用の肌着を一枚持っていれば嵩張らず、肌寒い夜間はその肌着で過ごし、朝になって乾いた
行動用の服にまた着替えれば服は減らせます。結局はすぐ汗臭くなる行動用の服を、毎日替える必要は無いでしょう。そのためにこそ速乾性の素材を、わざわざ山道具店で購入してくる
はずなのですから。
 ちなみにここのポイントは、山小屋内で単体で着た際に、違和感の無い冬用肌着を購入すること。例え上着を別に持っていても、以外に小屋が混んでいたりすれば、寝苦しくなったりする
こともあるはずです。ベージュやピンクの「いかにも下着です」という肌着、薄すぎるものは避けたいものですね。

 冬用肌着は、私の場合パタゴニアの「キャプリーン4」を愛用しています。パタゴニアはカットが女性の体に合わせた立体裁断なので動きやすく、着た時のシルエットも綺麗。生地と肌の間
に空間が出来にくく暖かい他、カラーリングも鮮やか。山でもオシャレは楽しみましょう。
http://www.patagonia.com

 女性の場合は少々高価でも、気に入った色やデザインがあれば、購入する決め手になるのではないでしょうか。山でのウェア選びは、ついついたくさん買ってしまっても、デザインや快適
性で、結局は気に入ったものを繰り返し使ってしまうものです。



本格的な靴選びは慎重に


 日常的なジョギングならともかく、フルマラソンに出るとなれば、靴も慎重に選ぶでしょう。まして山ではフルマラソン並みや、それ以上に歩くこともあるはずです。足の形は千差万別、長時
間歩いてくれる自分の足に履く靴は、どんな道具よりも慎重に選びましょう。

 ただし本格的な登山を、これから本当にするのかどうか解らない人までが、いきなり重い靴を選ぶことはありません。ただ手にとって重さを比べるのではなく、靴はフィット感で体感する重さ
が違うので、かならず履いてみて、自分にフィットしていれば軽く感じるはずです。

 メーカーによって足形もまちまちなので、足の浮腫む夕方以降に、なるべく多くの店を廻ってみましょう。各店舗で扱うメーカーは、その店が契約した限られたメーカーになてしまうため、よ
り多種のメーカーを履き比べる必要があるからです。

 「ハイキングから始めたい。出来ればトレイルランニングなんかにも興味がある」という人は、別にトレランシューズから始めたって構わないのではないでしょうか?(事故すればすぐ装備不
足が何のと報道されがち。でもアレは、それ以外の事故の要因がきちんと説明できないだけだと思うのです)
 そして山を歩く中で、
 「足首まで覆われていないと挫きそうで怖い」
 「縦走にも行きたくなったし、担ぐ荷物も重くなったので、ソールのしっかりした靴が欲しい」
といった考えが出てきたら、それに合わせて靴を選べば良いのです。

 軽登山靴では機能が足りなくなってきて、重登山靴を買い足したとしても、それは決して無駄にはなりません。
 低山ハイクなら軽い靴、大きな山では本格的な靴、とTPOで使い分ければ、登山はより一層快適なものとなるでしょう。

 
左から順に、軽登山靴(岩のルートのアプローチ用にも使う)、中級山岳用の靴(標高差の大きな山に使う)、そしてトレランシューズ(山小屋に遊びに行くだけならこれ)
(この他厳冬期用の冬靴もあるがソールが硬く重量もあるので、私は夏山に関しては余り重い靴を履きたくない)

 さて、最近よく見かける登山者の靴の中には、日本の山に向かない靴も海外から入ってきているようです。それは「ロックシューズ」。
 一見して登山靴のように見えますが、本来岩登りのために使われる靴であるため、岩に乗り込みやすいように爪先がタイトで硬く、足裏感覚がダイレクトに伝わるようクッション性の無い作
りとなっています。

 お客様によると、仕入れる側の道具店でも知識が乏しく、「岩稜の縦走ならばこの靴を」と、勧められたとのこと。デザインも登山靴よりはカラフルなものが多く、間違って買った人の中には
デザインだけで選んだ人も多いのではないでしょうか。

 この靴の特徴から、ヨーロッパアルプスの氷河のアプローチや、ケーブル、登山電車でのアプローチであれば、何級かの岩場くらいは快適に登れるでしょう。けれどここは日本の山。長い
アプローチや下山は、急峻な地面が大半で、ロックシューズではクッションが無い上に足指が詰まって痛めてしまうこともあるでしょう。ロックシューズを使うことで、辛そうに歩いている人もよ
く見かけます。

 ちなみに先日、某女性登山家のTV登山教室では、初心者登山者役の俳優さんに、このロックシューズをお勧めして首都圏近郊の低山歩きに出掛けていましたが、あれって快適じゃなか
ったでしょうね。

 
北鎌尾根にて(ロックシューズを履くSさん)

まして女性では自重が軽く靴に対する加重が少ないこと、靴のサイズもより小さいことなどから、硬いロックシューズではむしろ岩に乗り込みにくくバランスを崩してしまいます。例えば前期
のお客様は足のサイズが22a。体格も小柄でロックシューズを使いこなせず、槍ヶ岳の北鎌尾根では大変な苦労をされたそうです。
 高グレードな岩場を靴で登らなければいけないのであればともかく、そんな難しい岩場であれば、日本では登山靴でアプローチして、クライミングシューズに履き替えてしまった方が、得策
と言えるのではないでしょうか。






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山岳ガイド ミキヤツ登山教室は、夏山、冬山ともに国内では八ヶ岳、穂高・槍ヶ岳、剣岳、北岳、小川山、瑞牆山など、海外ではヨーロッパのシャモニ、ドロミテで山岳ガイド、登山教室、雪
山教室、クライミング教室を行っています